少し不気味な人民元安
今週の日経平均は先週まで続いた戻りを試す動きが一服し、やや下方向を意識した膠着状態になっている印象です。週末に米雇用統計が控えているせいもあるかもしれませんが、7月6日(水)の取引では下値を探る動きを見せました。
そのきっかけは、英国の商業用不動産ファンドが解約の受付けを停止したことや、IMFの金融システム評価レポートおよび米FRBのストレステストを受けて一部の欧州金融機関への不安が警戒され、欧米市場で株安・円高が進んだことです。英国国民投票のファースト・インパクトが先週で一巡し、やや楽観ムードを取り戻しつつありましたが、実は中長期的なリスクの足音が密かに忍び寄っているムードが感じられ始めたような印象です。英国国民投票の余波を見極める動きがしばらく続きそうです。
何かと欧米市場の動向に目が向かいがちですが、最近の相場の材料になることが少ない中国に視点を移すと、株式市場は上海総合指数が3,000ポイントを回復するなど復調傾向になっている一方、為替市場では人民元安が続いています。「○年ぶりの人民元安」というように人民元安傾向が報じられることが増えたのは今年に入ってからですが、当初は米国の利上げ観測の高まりによる「ドル買い・人民元売り」と受け止められていました。
ただ、足元では英国国民投票の結果とその後の市場の反応を受け、少なくとも7月開催の米FOMCでは利上げが見送られるという見通しになっています。にもかかわらず、人民元安傾向の修正は行われていないようです。中国の輸出全体における欧州向けの割合は2割程度を占めており、英国国民投票後の欧州経済の悪化が中国経済の悪化につながると警戒されているのかもしれません。
以前、人民元安の背景に中国経済の後退や不安が反映されるようになると危険な兆候と指摘したことがありますが、人民元安を通じて、中国からの資金流出や、海外から資金が中国に入ってこないなどの「金回り」の悪化によって、債務問題や外貨準備高の減少などの諸問題が浮上し、さらに人民元安が進行するといったハードランディングシナリオが現実味を増してくることになります。
そのため、中国当局は過度な人民元安を避けるべく、今後も人民元や株式を買い支えていくと思われますが、一部では「9月危機説」というのが囁かれています。中国は今年のG20会合の議長国ですが、「9月のG20首脳会合までは対面を保つために人民元や株式をコントロールするだろうが、その先は不透明」というものです。また、10月には人民元がIMFのSDR(特別引出権)構成通貨に組み入れられる予定です。国際通貨としての地位を獲得するのと引き換えにその当局による微妙なコントロールが制限されることにもなるため、注意が必要です。
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