「相場は落ち着けども波高し」

2025/04/18

今週の国内株式市場ですが、日経平均が34,000円、TOPIXは2,500pといった具合に、節目の株価水準を意識しつつ、これまでのところ、比較的堅調な推移となっています。また、前日終値からの変動幅も、先週の連日で4ケタの株価の騰落が続いていたことを踏まえると、かなり落ち着きを取り戻していると言えます。

また、先週の日経平均は、先週7日の取引で30,792円まで下落する場面がありましたが、当時と比べると足元の株価水準はかなり切り上がっていますので、下値不安はひとまず後退したような印象になっています。

ただし、必ずしも「値動きの落ち着きが、そのまま相場の底打ち」になるとは限りません。

とりわけ、注意したいのが「株価の戻りが微妙」である点です。具体的に、足元の日経平均で見て行くと、現在も先週4月10日(木)の高値(34,639円)を超えきれていません。この日は、米トランプ政権のいわゆる「相互関税の上乗せ分」の発動を90日間停止することが伝わって、国内外の株式市場が大きく上昇した日でした。つまり、この時につけた高値を、さらに上回れるような材料が出てこないことや、継続的な相場のムード改善につながっておらず、上値が重たくなっている要因として想像できます。

とはいえ、直近の国内外市場を見渡すと、決して好材料が無かったわけではありません。例えば、今週に入って出揃った米金融大手6社(JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、ウェルズ・ファーゴ、シティグループ、モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス)の決算が、いずれもEPS(1株あたり利益)が市場予想を上回ったことや、16日(水)に発表された米3月小売売上高も前月比で予想を上回ったことなどが挙げられます。同じく中国でも16日に発表された1-3月期のGDPが前年同期比でプラス5.4%と市場予想を上回っています。

これらの材料が、「なぜ株価の上値を追う材料にならなかったのか?」ですが、市場の意識が「出てきた数字」よりも「先行きの不安」へと向いているためと考えられます。実際に、先ほどの米小売売上高や中国GDPの堅調な結果も、「関税強化前の駆け込みによって予想よりも上振れたと思われ、次回(4月)以降に注意」という受け止めの方が優勢です。

結局は、「米トランプ政権の動向次第で、状況が悪化するかもしれない」という、先行きの不安がくすぶっていることになります。こうした不安が軽減されない限り、株式市場は様子見や変化する状況に対して受け身にならざるを得ない状況が続くことになります。また、不透明な事態が長期化するほど、企業が先行きの計画が立てられず、経済活動も停滞していくことになります。

したがって、国内外の株式市場は、先日つけた安値をもう一度トライする可能性も考えておく必要がありますが、その場合、「不安の先取り」する格好だった先日の株価下落が現実のものになりつつあることを意味する可能性があります。来週以降も日米の企業決算をにらみながらの展開が想定されますが、しばらくは目先の株価の上下に振り回されつつ、中長期の株価低迷シナリオの浮上に警戒しておく必要がありそうです。

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