米国株の「危うい」強さ

2024/12/06

12月相場入りとなった今週の株式市場ですが、5日(木)の取引開始時点で日経平均が39,600円台に乗せるなど、これまでのところ、株価水準を切り上げる展開が目立っています。

10月から続いているレンジ相場(38,000円から40,000円の範囲)からはまだ脱し切れていませんが、季節的には年末相場への期待で株価は上昇しやすい時期でもあるため、このまま40,000円超えをトライできるかが目先の焦点になりそうです。

また、米国株に視線を向けても、4日(水)の主要株価指数(NYダウ・S&P500・NASDAQ)が揃って最高値を更新するなど、好調さを維持しています。日米ともに株式市場に明るいムードが漂っているような印象です。

日本株については、企業の自社株買いが下値の支えになっているほか、金利上昇による銀行株買い、米国株と比べた出遅れ感や割安感、そして、足元ではGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による運用比率の見直しへの思惑なども買い材料となっている模様です。

一方の米国株については、「12月のFOMCで利下げが実施される見込みが強まった」ことをはじめ、「半導体関連株に買い戻しが入った」こと、「次期トランプ政権への期待」などが、買い材料として挙げられます。

このまま株高基調が継続して行く展開に期待したいところではありますが、米国株の強さには「危うさ」を抱えている点には注意が必要かもしれません。

いくつかポイントがあるのですが、まず、「米国株はすでに割高になっている」という点です。主要株価指数のPER(株価収益倍率)が過去の平均と比べても高くなっているほか、株式(S&P500)の益回りと、債券(米10年債)の利回りの水準とのあいだにあまり差がなく、本来であればリスク資産の株式の方が、安全資産の債券よりも期待リターンが高くなるのですが、利回り(益回り)面では債券の方が優位であり、それだけ株式が割高である状況が続いています。

もちろん、12月17日から18日に開催されるFOMCで利下げが見込まれているように、このまま米国の金利低下傾向が続けば、株式の割高感は軽減されていくことになります。さらに、次期トランプ政権で財務長官候補に金融業界出身のスコット・ベッセント氏が指名されたことで、「インフレの再燃を上手いこと抑制してくれる」との期待も高まっています。

しかしながら、トランプ氏の掲げる関税政策や不法移民政策は、インフレ圧力につながる懸念があることや、米国の東海岸やメキシコ湾岸の労働者ストライキも、11月中旬に労使交渉が決裂して以降、動きを見せていません。このままだと、労働協約の改定期限を迎える来年1月中旬にストライキが再開される可能性もあります。「バイデン政権時のインフレへの批判」が米大統領選挙でトランプ氏が勝利した要因のひとつであるだけに、次期トランプ政権がインフレ抑制に苦戦する状況になると、相場のムードが一気に悪化していくことも考えられます。

年末までは好調な相場地合いが続きそうですが、来年1月20日の米大統領就任日が近づくにつれ、警戒感が株価の上値を抑えてしまう展開にも準備しておく必要があるかもしれません。

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