「相場の『幕間つなぎ』は循環物色の流れとなるか?」

2024/06/28

6月最終週となった今週の国内株市場ですが、日経平均が25日(火)の取引で39,000円台を回復し、翌26日(水)にはTOPIXも節目の2,800p台に乗せてくるなど、これまでのところ回復基調を辿っています。

テクニカル分析的には、日経平均が4月下旬より、75日移動平均線に沿った攻防が約2カ月間にわたって繰り広げられてきたほか、6月に入ってからは、ボリンジャーバンドの幅が狭くなる「スクイーズ」の状況が続くなど、市場のエネルギーが蓄積されていた状況だったこともあり、今週に見せた株価の動き出しは、新たなトレンド発生となる可能性があります。

しかも、上方向への動き出しであるため、大いに期待したいところではありますが、足元の株価上昇の背景について考えてみると、利益確定売りに押されて、軟調となっていたグロース株の受け皿として、バリュー株への物色が進んでいた中で、再び半導体関連株などに見直し買いが入り、グロース株も買われるという、スムーズに物色の矛先が入れ替わる、「幕間つなぎ」的な側面があります。

その他、投資家が受け取った配当金を再投資にまわす動きへの思惑や、米大統領候補者によるTV討論会が予定されている中で、政治への関心が高まり、米中関係や景気への不安が根強い中国株が再び失速し始めて、日本株へ資金が戻ってきたのではという観測、足元で再度進行している為替の円安の動きなど、相場の材料としては、「これまでにも見てきた景色」でもあるため、中長期的な相場シナリオの楽観度を強めたわけではなく、まだ安心してはいけない段階と言えます。

来週からの株式市場は7月相場に入っていきますが、米国では月初恒例の雇用統計が控えているほか、日本では3日の新紙幣発行や、7日の東京都知事選挙などが予定されています。月の中旬に入ると、日米で決算シーズンが本格化し、下旬からはパリ五輪も始まります。さらに、月末には、米FRBのFOMCと、日銀の金融政策決定会合が、同じ日程(30日~31日)で開催されるなど、7月は注目のイベントが多く、相場展開もかなり忙しいものになることが予想されます。

もっとも、日経平均とTOPIXにおける足元の株価は、3月につけた高値までの距離はさほど遠くはなく、高値圏を回復する動きは十分に考えられます。ただし、先ほども見てきたように、そこから先の「新値」を追えるような材料は現時点で乏しく、相場が勢いを持って駆け上がって行くという展開は考えにいため、相場全体というよりは、イベントや企業業績を確認しながら、個別で「買えるもの」を物色していく動きが中心になるかもしれません。

また、「上値を追っていくグロース株」と「割安感で買われるバリュー株」の往来による株価の上昇は、相場のムードがまだ楽観的であることの証左ではあるものの、こうした性質の異なる株の循環物色は長期に継続していくのは難しい面があります。

確かに、足元の株価は上昇の兆しを見せていますが、実は警戒が必要な相場局面なのかもしれません。

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楽天証券経済研究所 土信田 雅之が、マクロの視点で国内外の市況を解説。着目すべきチャートの動きや経済イベントなど、さまざまな観点からマーケットを分析いたします。
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