「揺れ動く米国経済と金融政策の思惑」

2024/04/05

4月相場入りとなった今週の国内株市場ですが、日経平均が週初の1日(月)から3日連続で下落し、節目の4万円台を下回るなど、これまでのところ、新年度のスタートダッシュはならなかったものの、翌4日には大きく反発してすぐさま4万円台を回復し、慌ただしい展開となっていますが、相場自体はまだ崩れていない印象です。

というのも、週あたまの株価下落の要因として挙げられていたのが、「期初の益出しの売り」と呼ばれる需給材料であるため、この益出しがピークアウトすれば、今度は「例年4月の外国人投資家は大きく買い越す傾向」という、同じ需給材料による買い期待が高まることも考えられるからです。

ちなみに、期初の益出しとは、国内の機関投資家が含み益のある株を4月や10月などの期初に売却することです。一般的に、いったん利益を確定させる(評価益を実現益にする)ほか、売却による現金化で機動的な運用がしやすくすることなどを目的として行われるとされています。

しかしながら、相場の視点を米国市場に向けると、2日(火)の米主要株価指数(NYダウ・S&P500・NASDAQ)が揃って下落するなど、少し雲行きが怪しくなっています。その背景にあるのが、この日に発表された米3月ISM製造業景況指数の結果が予想以上に強く、米国経済の堅調さが改めて確認されたことです。具体的に見て行くと、結果は50.3となり、市場予想(47.8)だけでなく、好不況の分かれ目とされる50も上回ってきました。

本来であれば、経済指標が好調なことは市場にとって良いことなのですが、株式市場が今回ネガティブに反応した理由は、「6月に開始とされる米FRBの利下げが後ずれするのではないか?」という思惑が働いたためです。

実際に、先月20日の米FOMC(連邦公開市場委員会)では、最近の米経済の強さを受けて、利下げ回数が年内3回の見通しから減少するのとではと思われていたのが、実際には3回の利下げ見通しの維持が示されたことが安心感をもたらし、米国株上昇のきっかけとなりました。

米国では今後、週末5日(金)の3月雇用統計をはじめ、来週10日には3月消費者物価指数(CPI)、そして15日には3月小売売上高など、注目の経済指標が相次ぎます。米経済のソフトランディング見通しが前提となる中、利下げ行うことで市場の緩みを生み、経済の過熱やインフレの再燃となるリスクとにらみ合いながら、しばらくの間は米金融政策の思惑で相場が変動しやすくなることが想定されます。3日(水)の取引では、この日に発表されたISM非製造業景況指数の結果が弱かったことで、米国株市場が持ち直す動きとなっていて、相場の「ふらつき感」も出始めています。

こうした米国の動きは、日本株にとっても為替の動向に影響を与えることにもなるため、他人事ではありません。円安メリットで輸出関連やインバウンド関連企業の株高観測が高まる面もあれば、国内でインフレが進行して国民生活を圧迫する面もあり、状況によっては経済・金融政策のバランスが難しくなる可能性があります。

2024年最初の3カ月間は大きく上昇してきた株式市場ですが、ここからは相場シナリオの再構築を意識しながら臨む必要があるかもしれません。

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