「半導体相場」の一巡と、「日本評価の蛙化」に注意
今週の株式市場ですが、ちょっと値動きは荒っぽいものの、高値圏での推移が続いています。とりわけ、「NISAの日」だった2月13日(火)の日経平均は、前日比で1,066円高と大幅な上昇となり、取引時間中には38,000円台に乗せる場面がありました。
さすがに翌14日(水)は売りに押されましたが、前日比で260円安にとどまっており、相場の楽観ムードが続いているような印象です。「生成AI投資」をテーマに、半導体関連やIT関連企業への物色が日米で続いているほか、国内では円安傾向を追い風に、インバウンドが業績に寄与した小売関連銘柄の上昇が目立っています。
上値追い意欲がまだもうしばらく続く可能性は高そうですが、その一方で、そろそろ相場トレンドの転換にも備えておく必要がありそうです。
短期的な視点では、米半導体企業で「マグニフィセント・セブン(M7)」に一角を担っているエヌビディアの決算が来週21日に予定されています。今年に入ってからのエヌビディア株は、13日(火)時点までの期間に目立った調整がないまま、株価が50%以上も上昇しており、日米の半導体銘柄もこの流れが波及して上昇しているものが散見されます。
それだけ同社への業績期待の高さがうかがえるわけですが、来週の決算へのハードルが高くなっていることや、いったんの材料出尽くしとなるケースには注意が必要かもしれません。特に、足元の株式市場は、「利益成長期待(EPSの伸び)が、金利上昇警戒(PERの割高感)を上回る」構図で上昇してきましたが、今週発表された米1月CPI(消費者物価指数)が予想よりも強い結果となり、米10年債利回りが4.3%まで上昇していることを踏まえると、相場の視点が企業業績から金利上昇による負の側面へ向かいやすくかもしれません。
また、日本株の支援材料となっている円安についても、その背景には日銀の金融政策のスタンスが緩和的と捉えられていることが影響しています。日本企業に対しては、PBR改善をはじめとする、資本コストを意識した改革が進むという、海外投資家からの期待感は今後も継続していくと思われるものの、日銀が緩和姿勢を続けるということは、日本経済が本格的なデフレ脱却の道筋を示せていないことの表れでもあり、長期的には決して手放しで喜べるものではありません。
実質賃金の低下傾向が続く中、政府や経団連などは今年の春闘で昨年を上回る賃上げ率の実現を目指してはいますが、「物価上昇に負けない賃金上昇」を実現できたとしても、物価が上昇すれば、その分だけ消費税負担も増え、消費を盛り上げるための税制の見直し等の支援が必要となるため、国内需要があまり盛り上がらず、金融政策の正常化も後ずれし、結局は円安による輸出関連やインバウンド期待頼みという経済構造に変化が見られなければ、折角の日本に対する見直し機運が萎んでしまう「蛙化」によって、日本株買いのムーブメントに水を差されることも考えられます。
このほか、3月に向けては、米大統領選挙が「スーパーチューズデー」というヤマ場を迎えることや、中国でも「全人代(全国人民代表大会)」が開催されることもあり、米中関係など、政治的な要因で市場が反応することも考えられ、現時点ではまだ大きな下落トレンド転換を想定する段階ではないものの、上昇相場への深追いには慎重さが求められる局面は近づいているのかもしれません。
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