2024年相場の視界は良好か?

2023/12/29

2023年相場の最後となる今週の国内株市場ですが、日経平均は27日(水)の取引で再び高値更新をうかがうところまで上昇するなど、これまでのところ、「掉尾の一振」(年末株高)も期待できる状況となっています。

年末の薄商いの中、27日(水)に公表された12月開催分の日銀会合の議事録(「主な意見)で、マイナス金利の解除に慎重な意見が目立っていたことで、金融政策の修正観測が後退したことや、新NISA開始に伴う資金流入への思惑が働いたことなどが株高に寄与した格好ではありますが、やはり主な牽引役となっているのは、好調さを維持している米国株の動きと言えます。

実際に、米国の株価指数に注目すると、NYダウやSOX指数、NASDAQ100など、すでに最高値を更新し上値を目指している「先行組」、S&P500やNASDAQなど、先行組にやや遅れて最高値更新を狙っている「キャッチアップ組」、そして、Russell2000などの長期間の底値圏から脱し、本格的な戻り基調に入りつつある「出遅れ組」の3つに分類されますが、先週あたりからいずれも上昇基調を辿っています。

こうした足元の米国株の強さは、先日の米FOMC(連邦公開市場委員会)を経て、来年(2024年)の利下げ期待が高まったことや、AIをテーマにした半導体関連株やハイテク関連株、IT関連株への買いが継続していることなどが原動力になっています。

もっとも、米国株市場には過熱感も漂っています。多くの米国株指数が最高値を更新していますが、前回に最高値を更新した時期と比べると、「イールド・スプレッド」はかなり低下しています。イールド・スプレッドとは、株式の益回りと債券利回りとの差の事で、リクツの上では、リスク資産である株式の益回りが、安全資産の債券利回りよりも高くなります。株式に優位性があればイールド・スプレッドは上昇し、債券が優位であれば低下していきます。

S&P500を例にした場合、12月22日時点のイールド・スプレッドは0.779%だったのですが、S&P500が前回に最高値を付けた2021年12月末時点の値は2.87%と、現在よりもかなり高くなっており、足元の米国株には割高感があると言えます。

また、利下げ期待についても、直近の株式市場では2024年中に4回から6回の利下げが予想されています。現在の株式市場がすでに利下げを先取りしているのであれば、足元の株価が上昇するほど、いざ利下げ実施が見えてくるタイミングで株が売られる確率が上昇することも考えられます。

さらに、足元では利下げ回数が焦点となっていますが、これは0.25%の利下げ幅が前提となっています。2024年の米国景気が「ソフトランディング」シナリオ通りに進むのであれば、景況感に応じて小刻みな利下げを行っていくことになりますが、反対に、景気後退の勢いが想定よりも強くなってしまうと、利下げ幅が0.5%や0.75%といった具合に大きくなり、景況感の悪化で株価が大きく下落する展開も想定されることになります。

基本的な2024年相場は強気の見通しを崩す必要はなさそうですが、目先で大きな調整がありそうなことや、ソフトランディングシナリオが揺らぐ展開に注意が必要なことは意識しておいた方が良さそうです。

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