日経平均3万円は通過点か否か?

2023/05/19

今週の国内株市場ですが、TOPIXが16日(火)に33年ぶりの高値を更新したほか、17日(水)の取引でも日経平均が終値で3万円の大台に乗せるなど、日本株の好調さが続いています。目先はさらに上値をトライできるかが注目されますが、日経平均では2021年9月14日の高値である30,795円が意識されそうです。

確かに、足元の日本株を取り巻く状況を見ると、米著名投資家のウォーレン・バフェット氏の発言効果をはじめ、相対的な景気状況の堅調さや足元の決算への安心感、東証による低PBRの改善要請といった企業の構造改革期待、日銀の金融政策が当面維持される見通しのほか、踏み上げ的な売り方の買い戻しといった需給面など、かなりの追い風が吹いているように感じます。

こうした日本株買いは外国人投資家が主導している面が強いと言えます。東証が公表している「投資部門別売買状況」を見ると、4月7日週から買い越し基調が続いており、それに伴って、日経平均は4月7日の27,518円から3万円台へと、一カ月あまりの短い期間で2,500円以上値を上げたことになります。

また、消去法的に日本株が買われている面もありそうです。米国株市場では、債務上限問題がムードを悪化させていることを背景に、米国株以外の投資先を探す中、まだ利上げが続き、景気悪化が懸念される欧州株や、米中対立やビジネス環境の不透明感が警戒される中国株よりも、地味ながら安定感のある日本株に一時的に資金が向かっている可能性があります。

日本株の急ピッチな上昇もあって、そろそろ過熱感も出てきそうですが、多少株価が下落したとしても、外国人の買い意欲が続く限りは、しばらく日本株の好調さが維持されるというのが短期的なシナリオになります。

ただし、気を付けておきたいのは、日本企業の決算は悪くはないものの、日経平均採用企業の予想PERは先週あたりから14倍台に上昇し、割安感が薄れつつある点です。日本株を今買う材料は多くありますが、買い続けるメイン材料の企業業績の伸び自体はあまり期待されていないことは意識する必要があります。

さらに、買いの勢いが削がれるきっかけとして、米債務上限問題が早期に解決し、一時的に日本株に避難している資金が米国株に還流することや、踏み上げ相場の燃料となっている売りポジションの一巡、米国景気の急ブレーキ、そして、いちばん注意が必要なものとして、日銀の金融政策の修正観測が高まることなどが挙げられます。

とはいえ、日本株への注目度が高まっていることには変わりはなく、これを良い機会として、中長期的にも買ってもらえるようにしていくことが、日経平均3万円台を通過点にできるか否かの試金石になりそうです。

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