「水準感」で動く日本株と「方向感」を探る米国株

2022/11/11

今週の株式市場ですが、これまでのところ日経平均は28,000円台をうかがうところまで上昇したものの、そこからの上値が重たくなっています。反対に、米中間選挙の投開票日を通過し、米CPI(消費者物価指数)の公表を待つタイミングとなる10日(木)の取引では、開始時点で「窓」空けを伴う下落を見せています。

とはいえ、売り込まれる動きにもなっておらず、「週の前半に上昇、週末に失速」というパターンを繰り返しながらも、ここ数週間の日経平均は下値を切り上げています。そのため、日本株は一定の値幅レンジ内での「水準感」で動いている印象です。

その一方で、米国株については次の「方向感」を探っているように見えます。足元では、10月13日の取引時間中につけた安値(28,660ドル)を起点として33,000ドル台を超えるところまで一気に株価が駆け上がってきました。年初からのNYダウは、大きな株価の上げ下げの中で安値を更新し、長期的な下落トレンドが継続していますが、このまま株価の上昇が続き、8月16日の直近高値(34,281ドル)を超えてくれば、本格的なトレンドの上昇転換や年末の株高シナリオが見えてきます。

実際に、例年のこの時期は株高になりやすい傾向があり、とりわけ米中間選挙が実施される年の勝率が高いというアノマリー(経験則)もあるため、心理面で株価を支える可能性があります。

継続的な株高には、「インフレの収束」、「景況感悪化のソフトランディング」、「金融政策の修正」の3つが揃うことが理想的ですが、金融政策の修正については、少なくともFRB(連邦準備理事会)によるターミナル・レート(政策金利の最高到達点)が見え始めたことは前向きな兆候といえます。ただ、残りの2つについては、まだインフレ警戒がくすぶっていることや、今後想定される景況感の悪化を株式市場が織り込み切れたかについても見極めが必要な状況です。

確かに、一般的な相場サイクルの視点に立てば、景況感の悪化とともにインフレが収束し、金融政策も緩和へと舵を切るという見通しによって、経済指標や業績の悪材料が株式市場にとっての好材料となって株価が上昇する場面は良く見られます。株価の底打ちが、実際の景気悪化の底打ちよりも早く訪れる、いわゆる「不景気の株高」パターンですが、足元の相場のムードもこのパターンが意識されているように見えます。

ただし、そもそも新型コロナウイルスの世界的な感染拡大という異例の事態に対して、異例の規模で金融&財政政策が実施され、異例の速さで経済の持ち直しとインフレが進行して、異例のピッチで金融引き締めが行われてきたことを踏まえると、今回は従来の相場サイクルの視点による株高パターンとは違う展開になる可能性も否定できないと言えます。

また、FRBによる金融政策の修正観測も、本来の目的であるインフレの収束ではなく、引き締め過ぎリスクを意識した「いったんの様子見」の方が意図としては強いと思われます。そのため、株式市場が強過ぎる展開になってしまうと、FRBの警戒を招いて再びタカ派姿勢を強めることも考えられます。

したがって、今後の相場展開において、「強い株高そのものが株高の邪魔をする」かもしれない点には注意しておく必要がありそうです。

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