足元の株価復調と、燻る「今回は違うかもしれない」警戒

2022/10/21

今週の国内株式市場ですが、これまでのところ反発する動きが目立っています。日経平均は週初の17日(月)に下落したものの、翌18日(火)には27,000円台を再回復しました。20日(木)の取引開始時点では下落しているものの、200日移動平均線の攻防となっています。

こうした株価の復調は、米国株市場の動きによって牽引された面があります。今週に入ってからの米主要株価指数の値動きを確認すると、18日(火)時点で、NYダウは3万ドル台を回復し、25日移動平均線を上抜けしたほか、S&P500やNASDAQ(総合)も25日移動平均線の攻防となっています。移動平均線で言えば、さらに上に位置している50日や200日移動平均線をトライできるかが注目されます。

米国株反発の背景にあるのは、先週までの株価急落による反動や、米大手金融機関の決算を受けて、企業業績が「思ったよりも悪くない」という受け止め方が広がったこと、そして、金融政策と財政政策の「ちぐはぐ」さで金融市場が混乱していた英国がひとまず落ち着きを取り戻したことなどが挙げられますが、その一方で、足元の株高に対しては、「ベアマーケット・ラリー(弱気相場の中の一時的上昇)に過ぎない」とった冷静な見方も根強くあります。

確かに、出揃った米大手金融機関6社(JPモルガン・チェース、シティG、モルガン・スタンレー、ウェルズ・ファーゴ、バンク・オブ・アメリカ、ゴールドマン・サックス)決算の中身を見ると、すべて減益だったのですが、EPS(1株当たり利益)については市場予想を上回っているところがほとんどだったため、過度な懸念が後退した格好です。

ただし、減益決算の裏には、貸倒引当金の積み増しをはじめ、企業のファイナンスやM&A案件の減少傾向など、現時点もしくは今後の景気の悪化が想定されていることが読み取れます。そのため、足元の相場の動きは、株価の下げ過ぎの反動(ショートカバー)に、決算への思惑が加わっている格好とも言えます。今後も相次ぐ金融機関以外の企業決算に対する期待を膨らませるには力不足かもしれません。

最近の株式市場は、冴えない経済指標が出てきても、あまり株価が下げなかったり、むしろ上昇するといった場面も出始めてきました。こうした動きは相場の底打ち局面でよく見られる光景でもあります。悪材料に対する市場の感応度が鈍くなるということは、それだけ懸念に対する織り込みが進んだことを意味するほか、過去の相場を見ても、実際の景気が底を打つよりも早く株価が上昇し始める経験則があるからです。つまり、一部では「買い場」を探る動きがあると考えることもできます。

例年の株式市場は、年末にかけて上昇する傾向もありますが、直近につけた株価の安値が大底と判断するには、足元の決算シーズンを無事に乗り切ることや、インフレの収束を示す材料がさらに増えてくること、FRB(連邦準備理事会)による利上げの「ターミナル・レート(政策金利の最高到達点)」にメドが立つことなど、まだチェックすべきポイントがあります。

さらに、米金融政策は前例のないハイペースで引き締めを行っているため、景気への悪影響について、直近までの株価下落で織り込み切れているのかという警戒もあり、「今回はいつもの経験則とは違う」可能性があります。株式市場はしばらくの間、順調に戻りを試しそうですが、いつ下落してもおかしくないことを念頭に置いて相場に臨むのが良さそうです。

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