株価のトレンドを決める分水嶺はどこか?

2022/05/20

今週の国内株式市場ですが、18日(水)取引終了時点の日経平均は先週末から4連騰となったほか、節目の27,000円台を超える場面が見られるところまで株価水準を切り上げるなど、戻り基調となっていましたが、翌19日(木)には、これまでの上昇を打ち消すような格好で取引が始まり、相場の不安定さが続いています。

株価チャートを過去に遡ると、日経平均の27,000円水準は昨年の安値をつけたあたりであるほか、今年に入ってからもリスクのオンとオフの分水嶺となっていて、先行き警戒感が強まると26,000円水準を目指す動きになる状況がうかがえます。また、同じ視点でTOPIXのチャートを確認すると、1,900pがリスクオフの境界線で、株価がここを下回ると1,850pや1,800pあたりを目安に下値を探る値動きとなっています。

今週の前半に演じた日本株の反発基調の背景には、国内企業の決算発表がピークを越え、決算に対する「好材料買い」と、「いったんの悪材料出尽くし買い」が併存していることによる相場の地合いの良さをはじめ、先週末のオプション・ミニ先物取引のSQという需給イベントの通過や、先週の株価下落局面で発生した信用取引の追証(追加保証金)対応の一巡といった、需給的な買いやすさが挙げられます。

また、米国株市場が反発基調を強めつつあることも、足元の株価上昇の背中を押している面がありました。先週の米国株市場は、主要3株価指数(NYダウ・NASDAQ・S&P500)が、揃って年初来安値を更新していたのですが、今週はガラリと真逆の展開でスタートしました。

先週までの米国株は5月3日~4日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)後の乱高下の後、6日の米4月雇用統計や9日の中国貿易統計、11日の4月CPI(消費者物価指数)などの結果を受けてさらに下方向への意識を強め、NYダウは33,000ドルから32,000ドル割れへと株価水準を一段階引き下げる動きとなっていました。

つまり、米金融政策の引き締め自体については、株式市場はひとまず織り込んだと考えて良いものの、現在は引き締めによる影響や、景況感悪化の度合いを経済指標などで確認しながら探っている状況に移っている可能性があります。

実際に、先週の米国経済指標(雇用統計とCPI)は、インフレ継続を意識される結果だったことで株価が下落していましたが、今週発表された鉱工業生産や小売売上高からは、景況感が目立って後退していないことが好感されて株価が反発に向かい、その後に米小売大手企業の冴えない決算が相次いだことで再び大きく下落しています。

先ほどの日経平均やTOPIXと同様に、米国株のチャートを確認すると、NYダウならば33,000ドル、NASDAQならば12,500pがリスクオフの分水嶺で、この水準を本格的に超えない限り、相場は下方向に向かいやすい状況が続くと思われます。

さらに、中国についても要警戒です。今週発表された4月の中国経済指標(工業生産・小売売上高・固定資産投資など)は、大きく減速する結果となりました。ただ、新型コロナウイルスによる上海のロックダウン(都市封鎖)が緩和される方針と報じられたこともあって、好悪の材料が相殺される格好で、今のところ株式市場はネガティブな反応は目立っていませんが、再び中国経済の悪化が注目されることも考えられるため、気を付けておきたいところです。

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