気をつけておきたい「中国リスク」の再浮上
今週の国内株市場ですが、これまでのところ日経平均は25日移動平均線を意識して上げ下げをする展開となっています。ただ、TOPIXについては25日移動平均線から下方向に乖離しつつあるような動きとなっており、全体としては弱含みの印象です。
日米で企業の決算が増えてきましたが、まだ相場に新たな方向感が生まれてはおらず、引き続き決算動向をにらみながらの推移になっていると言えます。
このように目先の相場の視点は企業業績に向かいがちですが、その一方で「中国リスク」への警戒感も必要になってくるかもしれません。週末16日(金)には日米首脳会談が行われ、中国に対する何らかの姿勢や取り組みが示される可能性があります。
中国リスクの中心と言えば、これまでの米中関係の動向がメインで、間接的に日本に影響があるという見方でしたが、ここにきて間接的な影響だけでなく、直接的な影響についても注意する必要があるかもしれません。
その兆候は企業業績にも表れ始めています。先週8日(木)の取引終了後に決算を発表したファーストリテイリングですが、それに対する翌9日(金)の株式市場の初期反応は一瞬だけ株高だったものの、値を下げる展開に転じてこの日は結局3.4%の大幅安で取引を終えました。決算内容や見通し自体は悪くなかったため、下落に転じた要因として、サプライズなしによる材料出尽くし感や、需給の思惑(この日はオプション取引・mini先物取引のSQ日でした)などが考えられますが、それ以外にも、最近話題になっている中国新彊綿の取り扱いをめぐるウイグル族への人権問題も影響しているのではという見方があります。
この「ウイグル問題」については、3月下旬に米国の機関投資家で構成される団体(ICCR)が、新疆ウイグル自治区の強制労働などに関わっていると思われる47社に、取引先の詳細などを開示するように求めたのをきっかけに耳にする機会が増えました。その47社の中にファーストリテイリングも入っています。
もちろん、中国側はこうした動きに反発していて、中国に対してネガティブな対応を示した企業やその商品などが中国のECサイトに表示されなくなったり、不買運動が起こったりするなどの圧力がかかっています。ファーストリテイリングに限らず、中国との関りが深い企業にとっては、中国の巨大な消費市場を失う懸念と、自国を含む他の国からの信頼を失う懸念との板挟みとなる場面が増えることが考えられます。さらに、人権問題を無視する姿勢はESGやSDGsの観点から投資家からの資金が入ってこなくなるデメリットもあります。サプライチェーンの見直しも含めて、企業は中国との距離感が課題になってくると思われます。
また、台湾をめぐる対立にも注意が必要です。政治イデオロギーの対立だけでなく、中国は「中国製造2025」という政策を掲げ、半導体の自国内生産比率を70%以上に引き上げることを目標のひとつにしており、台湾は半導体製造の要であるが故に、米国や周辺諸国を巻き込んで事態が深刻化するのではという不安が燻ることになります。もちろん日本も無関係ではなく、警戒しておく必要がありそうです。
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