株式市場は「コロナ克服」から先を織り込んで上昇できるか?
今週の国内株式市場ですが、10日(水)の日経平均終値は26,817円となり、2008年の安値からの戻り高値を更新しています。とはいえ、日によっては下落する場面も増えており、29年8カ月ぶりの株価水準水準まで一気に駆け上がってきた11月ほどの勢いはさすがに落ち着き始めている印象です。
相場上昇の原動力となった、抗新型コロナウイルスへのワクチンについては、英国で接種が始まり、米国でも、米ファイザー社と独ビオンテック社が共同開発したワクチンの緊急使用が認可され、こちらも接種が始まろうとするなど、ワクチン開発から接種へと「コロナ克服」への道のりを一歩進めた状況です。
こうしたワクチン普及とそれに伴う経済の正常化期待は、当面の間は相場を支える材料になりそうですが、別の見方をすると、コロナ克服が具体的に見え始めたということは、これまでの期待と現実とのギャップを埋めに行くことになります。
議論の視点はいくつかありますが、まず挙げられるのは、ウイルスワクチン期待と金融緩和による過剰流動性相場は、ワクチン効果で経済・社会が正常に向かうほど、両立しにくくなっていくということです。実際の経済正常化と金融引き締めはまだ先の話になりますが、最近の相場の特徴にもあるように、ワクチンの普及と効果が想定以上に進むと、引き締めを先取りする格好で株式市場が調整を迎える可能性があります。
また、各国の「対応力の差」も出てきます。いち早く生活と経済が日常に戻っていく国や地域と、そうでないところで温度差が生じることが予想されます。ワクチン普及の差や、政府のコロナ対策の差、感染拡大抑制後の経済回復を支援する財政力や、コロナ禍で膨らんだ債務の返済能力の差などがポイントになります。
現在、国内ではGoToキャンペーンが継続される一方で、自衛隊の派遣要請をする自治体が出てくるなど一部で医療崩壊が懸念されるという、ちぐはぐな状況となっています。このまま対策の明確な方針や行動が示されないまま、ずるずると状況が悪化すれば、それだけ他国と比べて回復が出遅れることになります。
さらに、そもそもワクチンに対する不安も燻っています。ワクチンの接種率や、中長期的に副作用が表れないかという安全性への懸念、そして、ワクチン接種によって、自分が感染しにくくなるのか、他人に感染させないのか、感染しても重症化を防げるのかといった具合に、「何に対してどれだけの効果があるのか?」がまだ判明していません。もっとも、足元で接種が始まろうとしている3種(ファイザー社、モデルナ社、アストラゼネカ社)のワクチンはいわば「第1世代」ですので、第2世代以降のワクチンの登場によって状況が変わることも考えられます。
そのため、「コロナ克服」から先を織り込めるのは期待が先行している今だからこその動きと考えられます。さらなる株価上昇があったとしても、その後大きな調整が一旦訪れることが想定されそうです。
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