新型コロナワクチン開発と全人代の胸算用
今週の国内株市場ですが、これまでのところ日経平均は堅調な値動きで、週初の18日(月)は先週末終値近辺での小動きでしたが、翌19日(火)からは一段高での推移となっています。
足元の株高の背景にあるのは、経済活動再開に向けた動きに加え、新型コロナウイルスのワクチン開発への思惑です。具体的には、米バイオ製薬のモデルナ社が開発したワクチンが初期の臨床試験で良好な結果となったと発表され、7月には数千人規模の最終段階の治験に入るということがきっかけとなりました。
ワクチンや治療薬の開発については世界各地の企業などで競争状態にあるため、早い段階での完成や量産への可能性は高まっていると言えます。各国の政府も開発の資金援助や承認プロセスの短縮化などの特例措置を設けていることも追い風です。早ければ今秋までに数百万のワクチンを用意できると指摘している金融機関のレポートもあります。
とはいえ、今回の新型コロナウイルスについてはまだ判明していないことが多く、実際の効果や副作用、安全性などに問題を抱えているほか、HIVウイルスのようにワクチンがまだ開発されていないものもあるため、思ったよりも時間がかかることも想定されます。通常のワクチン開発には10年近くかかると言われていますが、政治などの後押しによって時間軸をどこまで縮められるかは未知数です。
そのため、実際にワクチンが普及するまでのあいだに、感染の再拡大や実体経済の悪化が見られれば、今秋までのワクチン開発を見ている足元の株式市場は再び下落基調に転じやすく、現時点でさらに上値を追っていくには限界があり、新たな好材料が出てこないと難しいと思われます。
また、今週は中国で全人代(全国人民代表大会)が22日(金)から開幕されます。中国にとっては政治的に重要なイベントです。今回のポイントとしては、①コロナ克服を国内外にアピール、②今年の経済成長率目標はどのくらいか、③予算決定による財政出動への期待などです。
また、中国経済の内需は回復の兆しを見せているものの、外需の回復にはまだ時間がかかるため、今回の全人代で大規模な内需拡大策を打ち出すかも焦点です。細かいところでは、習近平氏をはじめとする指導部がマスクなしで出席するかどうかも注目されているようです。全人代の動向次第では株高の要因となることも考えらます。
とはいえ、米中摩擦をはじめ、新型コロナウイルスの初期対応や情報開示、強気な外交姿勢に対する海外からの批判も出ているほか、感染の再拡大は中国も例外ではないため、こちらもワクチン開発への胸算用と同様に中長期的に上値を追っていく材料としては力不足なのかもしれません。
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