高まってきた「ダブルパンチ」による金融市場のショック懸念

2020/03/13

今週の国内株市場ですが、日経平均はこれまでのところ20,000円台を下回る展開が続いており、先週末から一段安となっています。値動きも荒っぽく、週末のSQに向けた需給的な思惑も絡んでいるようです。

 

新型コロナウイルスについては、発生源の中国では感染者の増加が落ち着きを見せつつありますが、世界的には拡大傾向にあります。引き続き懸念が燻っていることに加え、先週開催されたOPEC(石油輸出国機構)会合で、OPEC加盟国とロシアなど非加盟産油国による協調減産の交渉が決裂したことを背景に原油安が進んだことも株安に追い打ちをかけた格好です。

 

原油先物取引(WTI)の価格は、9日(月)に一時1バレル=27ドルと前週末から34%下落し、1日の値動きとしては20089月の金融危機以来の下げとなりましたが、原油安の長期化はさらなるリスク要因となる可能性があります。

 

新型コロナウイルスの影響で世界的に旺盛な需要増が見込めない中、今回の交渉決裂による原油安は、エネルギー産業や関連企業の財務や業績、資金繰りに影を落とします。先週の7日には、レバノンが外貨建て国債のデフォルト(支払い延期)を発表していただけに、一気に懸念が高まることになりました。

 

原油安による収入減で、中東産油国の政府系ファンド(SWF)が株式などの資産を換金売りするのではとの懸念や、米国をはじめとするエネルギー関連企業についても、その開発資金を低格付けのハイイールド債の発行で賄っている面があり、資金繰りや債務の返済が厳しくなるのではとの見方も浮上してきます。

 

国際通貨基金(IMF)の調査では、産油国の財政収支が均衡となる原油価格は、サウジアラビアが1バレル=78ドル台、アラブ首長国連邦(UAE)が68ドル、イラクが59ドルとされています。現時点の価格はそれらを下回っているため、早い段階で回復できないと信用不安が現実味を帯びはじめてきます。

 

そのため、金融市場は新型コロナウイルスと原油安の「ダブルパンチ」の状況に左右される展開がしばらく続いてしまいそうです。

 

 

 

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