根強い米中合意への楽観「チキンレース」

2019/12/06

12月相場入りとなった今週の国内株市場ですが、これまでのところ上げ下げが繰り返されて目立った方向感が出てこない展開になっています。日経平均の動きを辿ると、23,000円から23,500円のレンジ内での推移が1カ月ほど続いている格好です。

 

米中関係の改善とそれに伴う国内外の景況感や企業業績の底打ち・回復期待によって、日経平均は8月下旬の安値から順調に23,000円台乗せまで株価を上昇させてきました。米中関係の改善については「第一段階の合意」という形で具体的なゴールが見えてきたこともあり、23,500円台からの上値が重たくなっています。これまで比較的早いピッチで株価が上昇してきたため、さらに株価が押し上がって行くためには、「具体的な合意内容の詳細」や「第二段階移行の合意に向けた動き」などの次の材料が待たれるところです。

 

ただし、足元ではそもそもの前提である「第一段階の合意」成立に対して、米中関係に揺らぎが生じ始めています。例えば、米議会では前日成立した「香港民主主義・人権法」に続き、今週は「ウイグル人権法案」が下院で可決されて中国側の反発を招いています。民主主義や人権といったイデオロギー、そして安全保障などは米中間で合意が得られにくい分野ですので、再び対立構造が深まってしまうと、第一段階の合意そのものが先送りされてしまうシナリオが浮上してきます。

 

とはいえ、現時点での市場はそこまで不安視していないようです。市場が楽観的な理由としては、①トランプ米大統領はウクライナ疑惑を抱え、習近平主席は香港問題を抱えて両者ともに落ち着かず、ひとまず合意して一時休戦したいだろう、②このままだと1215日に対中制裁関税第4弾の2回目が発動されてしまうため合意を急ぐだろう、③大統領選を来年に控えるトランプ氏としては、ここで景気を悪化させるわけにはいかないだろう、④同じく景気減速を食い止めたい中国としてもできるだけ早く今の状況を改善させたいだろう、などの見方が背景にあります。

 

最近の米中双方から出てくる合意成立についての発言が前向きだったり、後ろ向きだったりすることで株価も上げ下げして振り回されていますが、それでも相場が崩れないのは、「あくまでも駆け引きに過ぎず、合意されるという見方自体に変わりはない」というのが根底にあります。

 

しかし、ひとつの期限とされる1215日があと一週間あまりに迫っていますので、それまでに進展がみられないと焦りが生じて市場のムードが悪化してしまうことが考えられます。しかも、来週末の13日は国内先物取引のメジャーSQでもあるため、より株価が大きく動く可能性があることには注意しておく必要があります。

 

不安を抱えながらも楽観的だった市場の「チキンレース」が吉と出るか凶と出るかの答えは間もなく出てくるのかもしれません。

 

 

 

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