底堅い株価の裏側にある「危うさ」
今週の国内株市場ですが、これまでのところ堅調な推移になっています。ただし、今週22日から始まる米カンザスシティ連銀主催の経済シンポジウム(いわゆるジャクソンホール会議)を控え、様子見ムードが強い印象でもあります。
ここ2週間あまりの日経平均は、20,500円水準を挟んだ動きが続いていますが、日足のローソク足チャートを眺めてみると、安値圏では陽線(始値<終値)が多くなっていて、「取引が下落して始まっても、引けにかけて買い戻される」展開が増えています。先週は米国の長短金利の逆転(逆イールド)が発生し、国内外の株式市場が荒れた動きを演じていましたが、比較的短期間で落ち着いてきたと言えます。
景気後退懸念が高まっているドイツで財政支出案が検討されていることや、中国で銀行貸し出しの新たな指標金利が公表されるといった動きのほか、先ほどのジャクソンホール会議でも23日にパウエル米FRB議長の講演が予定されており、そこで金融緩和姿勢が示されることへの期待、トランプ大統領の減税への言及などが相場に安心感をもたらしています。
別の見方をすれば、金融市場は経済・金融政策の催促と前提にして動いているため、今後試されるのは「どこまで戻せるのか?」といった株価の反発力です。もちろん、思惑が外れた時の下落に注意する必要はありますが、今のところは状況の悪化を先取りする動きにはなっていません。
もっとも、米国などの金融緩和は円高圧力を強めることになるため、日本株にとっては素直な追い風とはならない可能性がありますし、安全資産とされる金の価格が上昇傾向にあるなど、株式市場が落ち着く一方でリスク回避の動きも見られるため、株価の戻りの勢いに弾みがつきにくい面もあります。
そもそも、ドイツ経済の悪化が懸念されるようになったのは、先日発表された4-6月期のGDPがマイナス成長になったことです。中国での自動車販売が落ち込んできたことがマイナスに寄与したとされており、引き続き中国の景気減速には注意が必要なことに変わりはありません。
また、先週の米NYダウは前日比で800ドルを超える下落を見せる場面を見せた後に反発に転じました。米企業のウォルマート決算と、消費関連の経済指標(小売売上高)の結果が良好だったことが株価反発の狼煙を上げたとされていますが、これまでの米株市場は、経済指標などの結果が多少冴えないぐらいの方が金融緩和期待を高めて株価を上昇させることが多かったことを踏まえると、先週の株価反発は良好な指標結果がきっかけになったということで、これまでとは反対の動きになっています。
それだけ景気減速懸念が強まっていることの裏返しとも言えますが、それと同時に、米国GDPの最大項目である消費関連の経済指標や企業決算の強さが示されたということは、9月に予定されている次回のFOMCで利下げを行う大義名分に欠けるという点でやや矛盾を生じさせています。そのため、金融緩和ありきで見せている足元の市場の安定さには危うさを秘めていると言えそうです。
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