「金融相場」の危うさ
今週の国内株市場ですが、日経平均は週の半ばまで21,500円を意識しつつ、やや膠着状態の展開が続いていました。パウエル米FRB議長の議会証言を控え、「利下げ期待モード」の見通しに変化がないかどうかを見極めようとしていた印象です。
その議会証言を受けた米国株市場は、S&P500が初の3,000ポイント台に乗せる場面があるなど、上昇の初期反応を見せています。パウエル議長の口からは直接の言及はなかったものの、貿易摩擦長期化による企業投資の減速や物価の停滞に懸念を示し、「緩和的な金融政策の必要性が高まっている」と述べたことで、今月末のFOMCで利下げが行われる見方が強まりました。
米FRBだけでなく、欧州のドラギECB総裁も追加金融緩和へと舵を切る姿勢を見せているほか、中国でも当局が金融緩和策を打ち出しています。さらに、インドやマレーシアなどの新興国でも利下げを行うところが増えてきていますし、日本では打てる手段は限られてはいるものの、追加金融緩和が出て来ないとは限りません。国内外の株式市場はいわば「金融相場」の様相を呈しています。
その一方で、先日のG20大阪サミットに合わせて行われた米中首脳会談において、米中摩擦は「一時休戦」となっていますが、その終焉への道程がまだ見通せないという状況に変化はありません。タイミング的には、企業決算の発表シーズンがまもなく本格化し、その動向によっては摩擦による実体経済への影響が警戒されているだけに、「業績相場」へと相場の視点が移り、金融緩和がこうした状況にどこまで抗えるかが試されることになりそうです。
米中摩擦以外にも、最近になって米国とイランの対立も目立ち始めており、しばらくは各国の金融緩和モードが続きそうですが、金融緩和の長期化はバブルや債務問題の火種を大きくしてしまいかねません。実体経済を支えるための金融緩和の長期化が過度なリスクオフをもたらして過剰な借り入れを促し、この積み上がった債務がどこかで問題視され始めた時に金融市場が混乱し、結局は実体経済も悪化してしまうという構図です。
以前より不安視されている中国の債務残高はGDP比で約2.5倍まで膨らんでいるほか、米国でも格付けの低い社債の発行が急増しています。米国の企業の債務残高はすでにリーマン・ショック前の水準を超えていると言われています。2019年相場も後半戦に入りましたが、油断できない状況はしばらく続きそうです。
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