さらなる株式市場の上昇には「コスパ」が試される

2019/04/12

今週の国内株市場ですが、これまでのところ軟調気味の展開が続いています。東証1部の売買代金が2兆円を下回る場面が増えているほか、日経平均も21,500円以上をキープしているものの、売りがやや優勢となっています。企業決算発表シーズンを間もなく迎えるタイミングの中で、様子見姿勢となっている印象です。

そのカギを握るものとして、設備投資関連銘柄でもあり、中国関連銘柄でもある安川電機の決算が注目されています。この原稿を執筆している時点ではまだ発表されていませんが、最近の株式市場上昇の背景にある、各国の金融政策の緩和スタンスと中国経済の持ち直しへの期待を継続的な買い材料として捉えて良いのかどうかを判断する目安になるわけです。そのため、決算内容を織り込むことになる12日(金)の株式市場は大きく動く可能性があります。

米国株市場に目を向けると、日経平均と同様にNYダウも節目の26,000ドル台を維持しつつも、上値を伸ばせていない展開となっていますが、ハイテク企業の多いナスダック指数は戻り高値を更新していているほか、フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)も最高値を更新し、現在もその水準にとどまっているなど一部で強い動きが見られます。こうした動きも、金融緩和や経済政策によって世界景気の減速懸念が後退するという楽観的な見方が相場を支えている格好です。

とりわけ、焦点となっているのが中国経済ですが、直近のPMIなどの中国の経済指標が好調となるなど、これまでに打ち出してきた経済政策の効果が出始めている兆候があるほか、現在進行形の米中協議が進展し、一定の成果があればより安心感が広がるのではという構図を描くことができます。まずは、最初のハードルである「景気減速に歯止めをかける」という点では、今のところ順調だと捉えて良いと思われます。

ただし、次のハードルとなるのは、「景気押し上げの勢いと強さ」になります。今週10日(水)に発表された3月の工作機械受注額速報値は、前年同月比で28.5%減という結果となり、6カ月連続で前年割れとなっています。米中関係の改善や経済政策がV字回復をもたらせることができるかは現時点で微妙です。さらに、金融緩和の動きについても、同じ10日にIMF(国際通貨基金)が公表した金融安定性報告書で、異例の金融緩和が長引いたことによるリスクの高まりを指摘しており、金融緩和の効果よりも副作用の方を懸念する見方が強まっています。

そのため、株式市場のさらなる上昇には、経済・金融政策の効果と副作用のバランスといった「コスパ」の見極めが重要なポイントになると思われ、相場の動きはまだ波乱含みが続く事態を想定しておいた方が良いのかもしれません。

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