ボラティリティの高い不安定なマーケットが継続
今年もとうとう12月に突入である。まだまだ先のことか、と思っていたら「もう」すでにその時間の中に飲み込まれている。クリスマスの飾りつけも街中で普通に見かけるようになり、「おせち料理受付」のチラシ広告もよく見るようになった。
さて、11月のマーケットは10月の回復ムードとは打って変わって、波乱含みの展開となった。脆弱さで崩壊しそうな懸念が常にまとわりつつも、米国市場はスルスルと戻したのに対して、日本市場は置いていかれる形となった。個人的には、あまり良い気分ではない。
米国市場はボラティリティの高い様相を呈した。10月下旬に合意された欧州債務問題への包括戦略に対してギリシャは国民投票で可否を決めることを表明したため、世界マーケットが大揺れに。加えて米金融大手のMFグローバルが倒産したことから、金融システムへの不安が高まった。イタリア国債ならびにスペイン国債が利回りの危険水準とされる7%レベルへ達し、フランス国債の利回り上昇やEUにおいて最も安定した財政状態であるドイツ国債が札割れとなる異例事態が生じたため、NYダウは一時は11231ドルと10月上旬のレベルまで下落。その後は、日米欧の主要6ヶ国の中央銀行がドル資金供給の拡充案を発表したために急速に買い戻された。11月のダウは12045ドルで取引を終え90ドル上昇し月間の騰落率は+0.8%。ナスダックは2620ドルとなり64ドル下落の-2.4%となった。
日本市場は世界マーケットの急激な動きに翻弄され、まさかの年初来安値の更新となった。11/25には日経平均が9/26につけた年初来安値8374円を大きく下回る8160円を記録。東証の売買代金も11日連続の1兆円割れとなり、市場参加者が減りダウンサイドリスク懸念が一気に高まった。月末にかけて値頃感からやや戻したものの不安定な市場心理を印象付けた。11月の日経平均は554円下落の8434円にて終了し月間騰落率は-6.2%、Topixは-4.7%と大幅に下落。一方、小型株市場はジャスダック平均が-3.0%、マザーズ指数は-7.7となり不調だった。
太田忠投資評価研究所のインターネットによる個人投資家向け「投資実践コース」における11月のモデルポートフォリオのパフォーマンスは-1.6%で着地。2011年の年初来では+4.3%となり、10月末までの+6.0%からはやや後退した。しかしながら、日経平均-17.5%、Topix-19.0%、ジャスダック平均-8.6%など主要指数に対しての優位性には変化なし。2009年3月スタート時からの累計では+43.4%である。
ポートフォリオ運用においては、10月の最終週において市場心理の改善を確認したため、株式投資ウェートを引き上げたが、11月は大幅下落の相場展開の中で逆指値ヒットが続出し、投資ウェートが今年最低水準の25%まで下落した。為替の動きは安定的であったものの、欧州問題に翻弄される状況の中では、好業績銘柄の株価も波乱含みに。
ボラティリティの大きい安定しない相場展開が続いている。欧州債務問題ならびに国債市場の緊張感はまだ継続中だ。12月も不安定な相場展開を前提とした運用戦略を取りたい。本格的に上昇相場入りとなれば、日々のボラティリティはもっと小さくなるのが一般的である。ボラティリティが大きいうちは、まだまだ波乱要因が潜んでいることが多い。
先月のコラムで「昨年と同じタイミングで株式市場は底入れか」と述べていたが、まだこのシナリオを支持できるだけの条件が整っているとは言えない。マーケット動向に引き続き細心の注意を払っていこう。