いいとこ取りの株式市場に期待
先月のコメントからはすっかり景色が変わってしまった日本の株式市場。
昔から、マーケットには3つの坂があると言われる。
「上り坂、下り坂、…そして、ま・さか」である。10/31の日銀による「まさか」の追加的金融緩和、政府による「まさかの」消費増税先送り&衆議院解散、そしてもう1つが日本の7-9月GDPの「まさか」のマイナス成長である。まさに一寸先は誰も想像しなかったことが次から次へと起こるという事実を突き付けられ、スリリングな展開である。
それでは、10月のモデルポートフォリオの状況のコメントを記し、今後のマーケットを展望してみよう。
10月のマーケットは日米国市場ともに急反発し高値更新の展開となった。
米国市場は反発。NYダウは9月に過去最高値17279ドルを付けた後、10月の中旬には一時15800ドル台まで売り込まれる厳しい局面を迎えた。9月の雇用統計は+24.8万人と予想の+23万人を上回ったものの、欧州経済の減速懸念や香港の民主化デモ、エボラ出血熱の拡大により売り圧力が上昇。加えて米国の経済指標においても一部減速感が出たことが追い打ちをかけた。しかしながら、下旬にかけて欧州経済指標に改善の兆しが出てきたことや米国企業の好決算を背景に買戻しが進んだ。FRBは10月をもって証券購入の量的金融緩和策を終了。日銀の金融緩和により月末に過去最高値を更新した。10月末におけるダウは17390ドルと前月より347ドル上昇し月間騰落率は+2.0%。ナスダックは4630となり137ポイント上昇の+3.1%となった。
日本市場は急反発から大幅に続伸し、日経平均は年初来高値を更新した。中旬までは欧米市場の下落や世界経済への懸念などで日経平均は14532円まで売り込まれ、為替も105.20円まで円高となった。しかし、過度な懸念が後退したことやGPIFによる日本株投資ウェートを従来の2倍の25%へ引き上げ、海外株も25%に引き上げることでリスクアセットへのシフトが明確になったこと、加えて31日には日銀による突然の追加的金融緩和の発表で日経平均が755円も上昇して売買代金が4.19兆円に膨らんだことでマーケットのムードは一気に明るくなった。為替も111円台に突入。10月の日経平均は16413円で取引を終え、9月末の16173円から240円上昇し月間騰落率は+1.5%。またTopixは+0.6%上昇した。一方、小型株市場はジャスダック平均が-2.7%、マザーズ指数は-5.1%となった。
太田忠投資評価研究所のインターネットによる個人投資家向け「投資実践コース」における10月のパフォーマンスは-1.9%となり、年初来は-1.1%(9月末+0.8%)、累計では+137.2%(9月末+141.7%)とやや後退。保有株式のウェートは9月末の88%から87%へ微減。ヘッジ戦略をおこなっていないためネットロング比率は87%となった。
それにしても10月は忙しい展開だった。中旬まではヘッジファンドによる先物の仕掛け売りも伴って下落が加速。一時は総悲観論に傾くムードが蔓延した。しかしながら、米国景気ならびに企業決算が好調なことに加えて、日本における追加的金融緩和の発表で流れは一変。
11月に入っても株式市場ならびに為替市場は年初来高値を更新。日銀の追加的金融緩和のサプライズに加え、消費再増税延期に伴う衆議院解散という新たなサプライズで日本マーケットは大きく変容している。とりわけ、10月の安値で一所懸命に日本株を売っていた海外投資家が買戻し&新規買いを積極的におこなっており、買い上がる展開になっている。為替も117円台に進み、いよいよ120円台を射程に捉えてきた。
先物買いによって日経平均だけが上がる展開となり、個別銘柄の上昇にまで至っていないが、今後は中身を伴った上昇へと変化していくだろう。
マーケットが下げれば日銀のETFが買い出動し、キャッシュポジションの高まっている個人投資家も買い出動、さらに今年のNISA枠の買いも見込まれるため、需給は非常に引き締まった「下げる要因に乏しい」という稀有な状況にある。
金融緩和にもかかわらず、増税が見送られ、そして選挙により自民党は論点に厚みの無かった「第三の矢」も研ぎ直してくるだろう。「大義なき選挙」「700億円の税金の無駄遣い」と一部で批判されているが、今回は日本政府が本当の意味で国民からの審判を仰ぎ、かつ世界に向けて日本の改革路線し信任を得るという点で、過去おこなわれた解散総選挙の中でも「最も意味のある」選挙だと私は考えている。外国人投資家からの注目をますます集めるに違いない。
7-9月のGDPが-1.6%と予想の+2.2%を大きく下回ったことで11/17の日経平均は517円の大幅安となったが、その後は順調に切り返している。本当に経済の先行きがダメならばこういうことは起こらない。日経平均はあっという間に16000円程度まで下落してもおかしくない。売り要因にはならない、ということだ。加えて、「在庫投資の減少」が今回のGDPの減少を引き起こしている面が強いことから、10-12月のGDPは良くなる方向へと動く可能性が強い。
したがって、現在の日本市場はまさに「いいとこ取り」の状況にある。この追い風を受けて、引き続き年末に向けて積極的なリターンの積み上げをおこなっていきたい。
弊社のインターネットによる個人投資家向け投資講座は随時受付中。ご興味のある方はぜひ一度ホームページをご訪問下さい。
⇒太田忠投資評価研究所の「投資講座」