投機の動きにご用心
5月も終盤戦に差し掛かった。それにしても、日本の株式市場はすごい。5/22の終値ベースの日経平均は15627円、NYダウは15307ドルと通貨単位を無視して数字だけ見ればとうとう逆転である。アベノミクス相場がスタートする直前は日経平均は4000ポイントものビハインドであった。NY市場も史上最高値を更新しているわけだから、今や日本株の上昇スピードは3倍くらい速いといった印象を受ける。現在、地球でもっともホットなトレードが「日本株の買い」「円の売り」であり、為替も対ドルベースで103円まで円安が進んでいる。
さて、4月のモデルポートフォリオのご報告である。4月のマーケットは日米市場とも上昇した。
米国市場は5ヵ月連続の上昇。雇用統計、住宅価格指数、中古住宅販売件数、耐久財受注などが市場予想を下回り、本格的に始まった米企業の1Qの決算も全般的には低調な内容が多かった。しかしながら、世界的金融緩和の流れを受けて買い優勢の展開に。またFRBによる金融緩和政策はまだしばらく継続されるとの見方が強まっている。4月のダウは14839ドルで取引を終え261ドル上昇し月間の騰落率は+1.8%。ナスダックは3328ドルとなり61ドル上昇の+1.9%となった。ナスダックは2000年11月7日以来12年半ぶりの高値水準。
日本市場は9ヵ月連続上昇し、小泉郵政改革以来の記録(05/5~06/1の9ヵ月連続上昇)と並んだ。4月の初めに日銀が発表した金融緩和策が従来規模とは全くことなるスケールである「異次元緩和」となったため買い意欲が高まり、日経平均は一気に13000円台の後半まで上昇。また為替も対ドルで99円台の後半まで円安となった。売買代金は連日3兆円超えの大商いとなり、とくに中小型株市場は8年ぶりの活況に沸いた。4月の日経平均は12397円で取引を終え、先月末の12397円から1463円上昇し月間騰落率は+11.8%、Topixは+12.6%となった。一方、小型株市場はジャスダック平均が+12.5%、マザーズ指数は+35.8%となり大型株に対してアウトパフォームした。
太田忠投資評価研究所のインターネットによる個人投資家向け「投資実践コース」における4月のパフォーマンスは+11.5%となり、年初来は+25.6%(3月末+12.6%)、累計では+100.3%(3月末+79.7%)と運用資産は大きく積み上がり、過去最高値を今月も更新。保有株式のウェートは増加し3月末の62%から4月末は79%へとアップした。ヘッジ戦略は現在おこなっていないため、ネットロング比率は3月末の62%から4月末は79%へと変化した。
5月は思っていた通り「Sell in May and Go Away」の展開とはなっていない。やはり「異次元金融緩和」の下では常識・慣習・アノマリーというのは機能せず、マーケットは「異次元上昇」を続けている。東証一部の売買代金は連日4兆円超えである。半年前までは7000億円~9000億円であったのがウソのようだ。
ところで、「投機の動きにご用心」である。個別銘柄の動きを見ていると、急激に売買高が盛り上がる銘柄は「急騰した後、急落」「急落した後、急騰」という動きが目立っている。もちろん、これまでもこうした動きは見られたが、5月に入ってからそのボラティリティは一段と大きくなった。これは、もちろん値動きを意図的に大きくして、1日の取引でも十分な「値幅取り」をしようという投機家が急増していることを示している。したがって、デイトレードをしない投資家が銘柄を買う際は気を付ける必要がある。急騰しているからといって、うかつに乗るとすぐさま「-10%」くらいの含み損が発生することがあるからだ。そして、投機にさらされた銘柄はしばらくはファンダメンタルズに関係なく不自然な上昇・下落が続く。
冷静になって対処することが必要であるが、今のマーケットだと当然のことながらデイトレーダーよりも継続保有の投資家の方が分がある。ギャップアップがリターンを押し上げる。その展開はしばらく続くと思う。下手な売り買いは「労多くして利少なし」、ではないか。