テーパリングするの? しないの?

複雑な心境を抱えつつ、東京2020オリンピックに突入した。連日熱い声援が送られ、日本人選手の躍進が目立つ一方、やはり日本でのコロナ感染再拡大が本格化している。日本のワクチン接種状況はまだ非常に心もとない限りだが、ワクチン接種先進国ですらまだ集団免疫を獲得している国はひとつもない事実には注目すべきである。ワクチン接種をしてもインド株を始めとする変異株にはあまり抑止力がないことがわかってきている。最近、街の中を歩いていて思うのは、やはり日本人の警戒心が緩んでいることだ。コロナについて一番我々が気をつけないといけないことは「感染していても自覚症状が出ないケースがある」という点である。発症しないままコロナウイルスが人から人へと感染していくのは恐ろしい。だから人からうつされないようにマスクをし、人にうつさないようにマスクをする。とても重要だ。この点がややおろそかになっていている。さて遅くなったが、6月のポートフォリオの状況ならびに7月の近況について記したい。

6月のマーケットは日米市場ともわずかに下落する展開となった。

米国市場は5ヶ月ぶりに小反落したものの、SP500とナスダック指数は過去最高値を更新。コロナワクチンの2回接種が国民の5割を超え、旅行・レジャーを中心に経済活動が再開されるとの期待が高まる。5月の雇用統計は+55.9万人と予想の+67.1万人を下回り、長期金利は月初の1.7%台から一時1.43%まで低下。ハイテク株が買われる。一方、FOMCにおいて2023年にゼロ金利が解除され2回の利上げ予想のシナリオが示されたことで利益確定売りが強まる。6月のNYダウは34502ドルと前月より26ドル下落し月間騰落率は-0.1%。ナスダックは14503となり755ポイント上昇の+5.5%となった。

東京市場も小幅反落。日本でようやくワクチン接種が本格化したことを受けて安心感が広がったものの、月末にかけて国内のインド株感染拡大への懸念や、6月のPMIが製造業・非製造業ともに前月割れとなった中国経済への先行き不透明感から売り優勢に。米国市場の乱高下で日経平均は6/21に953円安、6/22は873円高とボラティティが高まる。為替は先月末の109.80円から今月末は110.45円と円安に。売買代金は2.4兆円程度と商い萎む。6月の日経平均は28791円で取引を終え、5月末の28860円から68円下落し月間騰落率は-0.2%、Topixは+1.1%となった。一方、小型株市場はジャスダック平均が+2.7%、マザーズ指数は+5.0%となった。

太田忠投資評価研究所のインターネットによる個人投資家向け「投資実践コース」における6月のパフォーマンスは+3.5%となり、年初来+13.4%、累計では+240.9%(5月末+229.3%)と過去最高値を更新。6月末時点のポートフォリオの株式比率は85%で33銘柄を保有(5月末は83%で32銘柄を保有)。株式部分の含み益は+77.1%(5月末は+71.5%)。ただし、85%のうち現物株のウェートは51%、日経レバレッジETFの保有比率20%の実質ロング比率は40%でロングは合計92%。これに対し日経ダブルインバースETFの保有比率10%の実質ロング比率は-20%、純金ETF5%は株式とは逆の動きをするため、これらのロング比率は-25%。トータルでは65%のロングポジションである。

7月は米国市場が過去最高値を更新しつつ上昇したのに対し、日本市場は日経平均が1500も下げる展開となった。米国市場に比較して日本市場は割を食っている面が強く、なかなか3万円台を回復できなくなっている。いや、28000円すら維持できない状況だ。NYダウと日経平均の単純な株価格差は通常3000ポイント程度であるが、現時点で7650ポイントも開いており、過去最大のレベルにまで格差が開いている。米国株が買われ過ぎ、日本株が売られ過ぎの両面の要素がある。日経平均だけ見ると年初来のパフォーマンスはとうとうプラスが吹き飛び-0.6%となった。Topixは+5.3%とプラスを維持。それに対し弊社のポートフォリオは+10.6%と好調である。これはひとえに、銘柄選別効果、グロース株よりもバリュー株重視のスタンスをとっていることが奏功している。引き続きこのストラクチャーでの運用を継続したい。

ところで最近のFOMCを見ているとやや迷いが生じているという印象を受ける。もちろん量的金融緩和の終息で今後はテーパリングを目指すことになるのだが、正直のところ「テーパリングするの? しないの?」と疑問を投げかけたくなる。なぜなら、米国経済は確かにコロナ前の水準を回復したものの、景気はすでにピークアウトし今後緩やかな減速をするのではないか、というシナリオも考えなければならなくなっているからだ。債券市場を見るがよい。長期国債は3月には1.7%台にまで上昇したものの現在は1.2%台まで低下している。これは債券市場が景気減速を織り込んでいる証左だ。もしこのシナリオになればテーパリングはしばらく据え置かれ、また金融相場の様相逆戻りということも考えられる。

日本企業の1Q決算発表が始まった。米国企業の4-6月決算は好調だが、日本企業も健闘しそうだ。好決算発表後売られる企業もあるが、あくまでも一時的な動きである。弊社としては銘柄点検をおこないつつ必要に応じて銘柄の入れ替え、新規組み入れおこなう。皆さんもご自身のポートフォリオを各自でチェックして適切なアクションを取って欲しい。

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