米中首脳会談─本格的な市場心理の好転は来年2~3月か

2018/12/05

 

「来年1~2月の米朝首脳会談に向け中国に役割を期待」が米国の譲歩保留の一因と考えます

米中首脳会談は、貿易摩擦の激化回避にとどまる

G20(20ヵ国・地域首脳会議、11月30日~12月1日)が開催されたアルゼンチンのブエノスアイレスでの米中首脳会談は、「米中の貿易摩擦が激化することは回避された」と市場に一定程度、好感されました。週明けの月曜日(3日)、アジア時間帯で米国株(NYダウ)先物は急反発しました。

米国の強い圧力にもかかわらず、中国が米中関係の崩壊を望まない姿勢を明確にした点に市場は安堵したからです。中国側は、トランプ米政権が課してきた関税を撤回させるには至らず、来年初に予定された2,000億ドル分の中国製品への関税税率引上げ(10→25%)を90日間、米政権に猶予させる成果しか得られませんでした。

一方、トランプ大統領は「素晴らしいディール(取引)だ」と述べ、「中国は多くの農産物やその他製品を米国から買う」と強調しました(ロイター、3日付)。米国側が悪影響を懸念した農産物の分野では進展がみられ、「米国にやや有利だった」との印象を与えた米中首脳会談でした。

米中景気悪化リスクへの不安を和らげるに至らず

市場での最大の関心事は「現在の力強い米国景気がいつまで続くか?」です。リスク・シナリオとして市場が警戒するのは主に、(a)米中双方が発動した関税が撤廃されず長期化して米中景気が悪化するリスク、及び(b)FRB(米連邦準備制度理事会)が利上げを加速し米国景気が悪化するリスクです。リスク(b)は、FRB利上げ終了観測が市場で広がり始め、消えつつあります(注)。

(注)MYAM Market Report「FRB利上げ終了観測─『景気悪化のため』と誤解されたか」(2018.11.27)

一方、リスク(a)は、今回の米中首脳会談では、関税の一部撤回がなかった点で、「本格的に市場心理を好転させるにはまだ至っていない」と考えます。

「朝鮮半島の非核化」に向けた中国の役割に期待か

このように会談は、関税撤廃を求める中国側(後述)に、米政権が譲歩を保留した形です。その理由の一つには、「朝鮮半島の非核化」に向け、北朝鮮への働きかけを強めるよう中国に圧力をかける狙いがあった、と考えます。

実際、会談後の米政権の声明文は、米中首脳が「北朝鮮についても大きな進展があったとの認識で一致した」と記されました(英紙ガーディアン、2日付)。そしてトランプ大統領は帰国の機内で記者団に、2回目の米朝首脳会談を「年明け1~2月に開催する」見通しを示したのです。

【コラム】米朝交渉の難航が、関税発動のきっかけか?

今夏の対中関税発動は、「発動予定日の直前に撤回される」と市場も期待しましたが、通商以外の要因が作用した公算が高いと推測されます。通商交渉の現場は「米政権は5月の通商協議後に貿易戦争を保留にしたように見えたが、結局、関税をかけてきた」(中国商務省・王受文次官発言、ブルームバーグ、7月12日付)と困惑していたからです。 関税の発動予定日(7月6日)に訪朝したポンペオ米国務長官は、金正恩朝鮮労働党委員長に面会できませんでした。「『米国はギャングのよう』と北朝鮮に言われ反論した」(英BBC、7月9日付)との険悪な訪朝となり、米朝交渉は行き詰まりました。

保護主義を批判する文言を削除したG20首脳宣言

今回、市場を安堵させたのは、(i)上述「米中関係の崩壊を望まない中国の姿勢」に加え、(ii)G20首脳宣言から(トランプ米政権批判と同義である)保護主義を批判する文言が削除された点です。「米政権の関税は、短期間で撤回することを想定した交渉ツールであり、保護主義とは言い切れない」との認識が、各国に広まった模様です。トランプ大統領が「妥結すれば鉄鋼アルミ関税を撤回する」と発言(時事、3月6日付)していたカナダ・メキシコとのNAFTA(北米自由貿易協定)再交渉が、実体経済に悪影響が出る前に比較的短期間で妥結したことは、「対中交渉でも前例となり得る」との市場の期待につながっていると考えます。

加えて、(iii)「舞台裏で米中が協力し文言変更を他国に働きかけた可能性があり、米中関係の改善を示唆するもう一つの兆候」と市場に好感された面もあったと考えられます。今回、G20首脳宣言には、多国間の枠組みである「WTO(世界貿易機関)の改革推進」が盛り込まれました。2ヵ国間の枠組みを唱えるトランプ大統領の持論です。会談の直前、交渉の矢面に立つ中国商務省の王次官が「WTO改革の必要性を説いた」と報道されました(ロイター、11月24日付)。

米朝首脳会談後、来年2~3月に市場心理は好転か

今後、中国側は、25%の関税を500億ドル分の中国製品に課した米政権の制裁措置自体を「取り消す方向で協議する」(中国商務省・王次官発言、日経新聞、3日付)方針です。その期限は、「協議は4月1日よりも前に完了する必要があると中国共産党系メディアが報じた」(同)模様です。来年1~2月の米朝首脳会談の後、2~3月にかけ、関税が一部でも撤回される成果が得られれば、上述リスク(a)が和らぎ、市場心理は本格的に好転すると考えています。

明治安田アセットマネジメント株式会社
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かつて山間部の中学校などに金融教育の補助教材を届けていた頃の現場の先生方の言葉が、コラム執筆の原動力です。「金銭面で生きる力をつける教育は大切だが、私自身、株式など金融は教えられないのですよ」と。
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