米国株『トランプ株高』に復帰か─米国景気の先行きに自信

2018/04/20

 

北朝鮮情勢等で短期的な上下動を伴いつつも、向こう3~4年『トランプ株高』は続きそうです。

『トランプ株高』の上昇トレンドに復帰か

米国株(NYダウ)は今週火曜日(4月17日)、2016年秋の大統領選からスタートした株価上昇トレンド──すなわち『トランプ株高』──に復帰したようです。3月以降は、中間選挙を控えたトランプ大統領の通商政策や北朝鮮の核ミサイル開発への強硬姿勢等で市場の不安が高まり、上昇トレンドの下値支持線(=【図表】の平行線のうち下の直線)を割り込んでいました。今週火曜日、株価は下値支持線の上に戻ってきました。

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不安心理が和らぐにつれ、市場の関心が、再び米国景気の強さに戻りつつあるようです。具体的には次の3つが株価上昇要因と考えられます。

(1)ロシアとの衝突が回避されたシリア攻撃

シリアへの米英仏軍の攻撃(4月14日)は、市場の不安を高めるはずの要因でした。しかし、化学兵器関連施設に限定された攻撃だったこと等で、シリアを支援するロシアとの軍事衝突に発展せず、市場はひとまず安堵しました。

6月初までの間に見込まれる米朝トップ会談を控え、「北朝鮮の核兵器関連施設への攻撃も辞さない」とのメッセージでもあったようです。北朝鮮や(北朝鮮との協力関係が指摘される)イランの核開発を巡って市場の変動性が高まる可能性があり、引き続き注意が必要と考えられます。

(2)米国景気の力強さ/企業決算シーズン期待

米国景気の力強さが市場で再認識されつつあります。FOMC議事要旨(3月会合、4月11日公表)は「トランプ減税の景気刺激効果は、前回1月会合時点での想定より強い」と認めました。そして「利上げペースをやや加速する(slightly steeper)のが適切」と示唆したのです。

さらに今週火曜日(4月17日)発表のIMF世界経済見通しにおいても、米国の2018-19年経済成長率は、(昨年10月時点と比べ大幅に引き上げられていた)今年1月時点見通しから、さらに0.2%ポイントずつ上方修正されました(注)。

(注)今回の米国経済成長率見通しでは2018年が2.9%(昨年10月対比で0.6、今年1月対比で0.2%ポイント上方修正)、2019年が2.7%(昨年10月対比で0.8、今年1月対比で0.2%ポイント上方修正)となっています。

(3)「金利上昇を抑えれば米国景気は長続きする」

財政負担が大きい(政府機関閉鎖回避のためトランプ大統領が3月に署名・成立したばかりの)総額1.3兆ドル歳出法につき、(前代未聞の)減額修正法案の議会提出に意欲を示すトランプ大統領の動きも、市場は好感している様子です(【コラム】参照)。財政規律への配慮は「景気を腰折れさせる長期金利の急上昇を抑える」との期待感です。

前述のIMFは、向こう2年間は(潜在成長率を上回る)力強い過熱気味の米国景気拡大を見込んでいます。その先2020年から景気過熱が和らぎはじめ、2023年には景気減速感が強く意識される、との分析です。つまり、向こう3~4年間は、米国株価、ひいては日欧の株価やドル/円は、上下動を伴いながらも上昇トレンドが続くと考えられます。さらに、もしも減額修正法案に大規模インフラ投資への拠出資金確保の狙いもあるとしたら、潜在成長率を押し上げ、より長期にわたる米国の景気拡大が期待できそうです。

【コラム】財政規律に配慮するトランプ大統領

■ライアン下院議長が主導した1.3兆ドル歳出法案は、共和党は軍事費800億ドル増加を、民主党は国内支出630億ドル追加をそれぞれ評価して賛成したとされ、議会通過を最優先したバラマキ色の濃い法案でした。しかも、トランプ大統領にとっては、署名を拒否すれば、政府機関閉鎖となり中間選挙にダメージとなる二者択一の究極の選択でした。

■トランプ大統領の怒りは、ライアン下院議長の引退表明(4月11日)につながったと推測されます。下院議長の後任レースで「トランプ大統領の歓心を買うため」との報道もあるマッカーシー院内総務が減額修正法案を主導し、法案は「OMB(行政管理予算局)マルバニー局長が作成中、5月1日をメドに固める」と報じられています。

■4月初に就任したばかりのクドローNEC(国家経済会議)委員長は、こうした減額修正法案の動きがあることを認めた上で「歳出削減は悪い話ではない。我われは(民主党の『大きな政府』と異なり)『より質素な政府』(more modest government)を目指す」(Fox News、4月11日)と説明しています。なおクドロー委員長は、自由貿易の信奉者で、強いドルを指向しています。

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明治安田アセット/ストラテジストの眼   明治安田アセットマネジメント株式会社
かつて山間部の中学校などに金融教育の補助教材を届けていた頃の現場の先生方の言葉が、コラム執筆の原動力です。「金銭面で生きる力をつける教育は大切だが、私自身、株式など金融は教えられないのですよ」と。
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