リスクハングリーの世界金融市場、浮上する日本株式
【ストラテジーブレティン(144号)】
(1) 潜在的リスク-ギリシャ、中国、米国利上げ、資源価格下落、は織り込まれた
ギリシャ要因:さしあたっての7月ギリシャ危機はしのいだものの、引き続き債務返済期限が相次いで訪れるので、いずれデフォルトする可能性があるとの警戒感は消えていない。しかし、当面ギリシャの破たんはあり得ないだろう。経済困難の中、引き続き金融支援と債務のリストラは不可避だが、ここまで来たらドイツにギリシャを突き放す選択肢はないのではないか。ドイツの強硬姿勢に対してはフランス、イタリアなどの南欧諸国だけではなく米国やIMF が批判的になっている。そもそも過去二回の世界大戦の戦後処理に当たってはドイツこそ債務リストラの恩恵を最も強く受けた国、との批判が噴出している。またドイツは競争力には不釣り合いなユーロという安価な通貨を保有しており、ユーロ設立の最大の受益国であるので、ギリシャ支援とユーロ維持は国益である。ドイツの金融市場もそれを支持(つまりドイツ株式はそれを歓迎)している。
中国要因:株価暴落、経済失速は小康状態に入っていくだろう。普段温和な李克強首相が机をたたき株価対策を指示した(ウオールストリート・ジャーナル紙)。中国は今究極のContingency Policy を発動中である。株価の暴落は止まった。金融緩和、財政出動の余地は十分にある。公共投資、不動産投資は政策発動により上向き始めている。生産や輸出入、不動産投資に持ち直しの兆しが現われている。中国金融危機リスク、経済失速リスクは当面棚上げされるだろう。
米国最初の利上げ要因:9月に実施される公算が強まってきた。しかし、それは過剰懸念のガス抜きとなるのではないか。これほどまでのFRBの対話を持って尚、利上げが米国経済と金融市場の心理(アニマルスピリット)にネガティブと考える人は余程の皮肉屋であろう。市場参加者がいまだに米利上げをマイナス材料ととらえているとしたら、この先のポジティブサプライズは大きい。歴史的にも最初の利上げは景気と株価にマイナスに作用したことはなかった。
原油価格下落要因:単純に購買力の産油国から需要国への移転に過ぎない。但し、タイムラグが起きる。原油安は直ちに産油国(石油企業)の収入減と需要減を引き起し、同時に需要国(需要企業)の所得増をもたらす。しかし需要国の所得増が需要増加に結び付くには時間がかかる。今はタイムラグの局面と言える。例えば米国のエネルギー企業の収益は急減しているが、それが直ちに消費関連企業の需要増・収益増加には結びついていない。しかし需要サイドの需要増加は時間の問題。米日欧先進国には空前の「石油減税」の効果が蓄積されているはずである。原油価格下落のマイナスはすでに顕在化しているが、プラスはようやくこれから表面化すると見込まれる。それは今後の世界株高要因となる。
ストラテジーブレティン141号「ギリシャ国民投票で緊縮策にノー、債権者側とドイツは譲歩を迫られるだろう」(2015年7月5日)、142号「中国、繰り出される究極の弥縫策、Contingency plan発動か ~ 高まる存在感とは裏腹に ~」(2015年7月30日)を参照ください。