世界最弱から最強へ
~ 安倍首相の顕著なリーダーシップ ~

2013/10/04

【ストラテジーブレティン(107号)】

10月1日、安倍首相が3%消費税増税を最終的に決断した。消費税増税による8兆円の国民負担を5兆円規模の経済対策によって極力下支えするという。これらの政策やアベノミクスは、安倍首相の非常に強いリーダーシップにより実現していると言える。6年で6人の首相が交代し(2006年第一次安倍政権以降、2007年 福田、2008年 麻生、2009年 鳩山、2010年 菅、2011年 野田)、「回転ドア」政治と揶揄された世界最弱の政権が続いてきた。

しかし、2012年12月に誕生した第二次安倍政権は、以下の4つの観点からみれば、世界でも最強レベルの指導力を持っていると言える。

① 高い支持率
まずは、60%以上という国民の高い支持率。これは、先日選挙で大勝したドイツのメルケル首相の支持率並みと言え、英国のキャメロン首相やフランスのオランド大統領、米国のオバマ大統領などと比べても、安倍首相に対する国民の支持は強いことがわかる。

② 議会での優位
次に、議会における圧倒的な議決数を確保したことによる政策遂行能力の高さ。政策が何も決まらなかった衆・参両議院において、与党と野党のねじれ現象が解消された。与党が過半数を占め、政権が目指す政策の実現が容易になったのである。米国においては、現在も議会のねじれにより、野党である共和党の抵抗で、大統領の政策が遂行されにくくなっている。メルケル政権継続のドイツでさえも、与党キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)だけでは過半数に達せず、野党社会民主党(SPD)との連立政権模索を余儀なくされているほどだ。

③ 残る任期の長さ
また、安倍政権の残された任期は強みである。あと3年間、選挙なしで現在の優位が維持できるのだ。オバマがリーダーシップを失いつつあるのと比べ、安倍首相・安倍政権の力強い政治のリーダーシップは、今後も発揮されるだろう。

④ 強いリーダーを希求する国民の求心力
そして、最大の要因は、日本国民の意識の大転換である。大震災や尖閣問題などにより国家や経済が危機に陥るような事態が起こらなかったら、安倍氏の首相再登場はなかったのではないか。有権者は命や財産に対する脅威、子供たちの将来がみじめになっていく可能性、などの懸念を持ち始め、これまでの政治や安全保障に対する傍観者な態度を大きく変えた。そうした危機意識が、有権者が強いリーダーを求め始めた底流にある。

求心力の希求は、2020年東京オリンピック招致を成功させた根本的的要因でもある。前回4年前のオリンピック候補地選択の際には、東京はリオデジャネイロに敗れてしまった。東京に多くの優位性があったにもかかわらず、である。最大の弱点は、国民の支持がなかったことにある。非常に多くのメディアがオリンピック招致に批判的だった。政党でも、自民党を除いては招致に極めて消極的もしくは否定的。オリンピックが一つの争点となった2007年の東京都知事選において、自民党の支持候補として石原慎太郎氏が当選したわけだが、その他の候補者はそもそも招致に反対だった。従来日本人のメンタリティは、権威を批判し、経済や政治に対してやや反抗的に向き合うという姿勢が強かった。しかし、そのような態度が大きく変化し日本国民の遠心力が求心力に変わった。それが安倍政権を支える柱となっている。済や政治に対してやや反抗的に向き合うという姿勢が強かった。しかし、そのような態度が大きく変化し日本国民の遠心力が求心力に変わった。それが安倍政権を支える柱となっている。

1980年に米国では、やや極端な反共自由主義者と思われていたレーガン氏が、カーター政権のイラン政策失敗の後大統領に就任、レーガン氏の対ソ連強硬路線が、10年後の冷戦終焉に帰結した。この背景には、当初は反共主義と思われ、国民から警戒されていた指導部が登場しなければならないという歴史的必然性があり、レーガン氏は時代が求めている指導者の台頭そのものであった。安倍首相の登場の場合にも、それが歴史の転換点において時代が求めている指導者であるという可能性が考えられる。

経済や金融、特に株式を考える上で、政治的な安定度、地政学的な基盤の強さは決定的に重要である。冷戦下で日米安保条約の庇護の下、軽武装「町人国家」(天谷直弘氏の表現)としてPolitical apathy(政治的無関心状態)の続いた戦後日本が、大きな転換期に差し掛かっていることは否定できない。そしてPolitical apathyからの脱却という歴史が求めている課題を解決する強いリーダーとして安倍首相が登場した可能性が考えられる。とすれば、安倍首相の政権基盤はかつてなく強固であると言える。

現在、世界で最も重要な地政学上の課題は、共産党独裁政権である中国が世界最強の経済大国になるという、非常に大きな体制上のミスマッチングをどのようにマネージしていくかだが、それに対してはチャーチルやレーガンが示したような一定の原理的姿勢が必要だと考えられる。保守主義者、リアリストでありナショナリストである安倍首相の登場は、地政学的、歴史的必然という要素があることを、念頭に置くべきであろう。

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