減税モードからステルス増税へのシフト
~石破政権、国民の批判に耐えられるか~

2025/06/16

【ストラテジーブレティン(380号)】

国会会期末となり東京都議選、参議院選の争いの時期に突入したが、1か月前には思ってもみなかった政治情勢の急変が起きている。二つの側面から事態が変化した。第一は国民民主党の圧倒的人気が萎え、自民党の復調と内閣支持率が上昇したことである。国民民主党の人気急落は、SNS上で批判・拒否感が強かった山尾志桜里氏を公認候補に指名したこと等オウンゴールという面が大きい。また令和のコメ騒動が自民党に有利に作用している。登場した小泉新農相による随意契約による備蓄米放出、店頭価格急低下が、自民党支持率の急回復に繋がった。

減税からコメへ、政策争点のシフト
第二のより重要な変化は、政策の争点が減税からずれてしまったことである。昨年の衆院選挙以来、国民民主党の手取りを増やす減税路線を軸に政策論争が展開されてきたが、コメの値上がりと小泉新農相による備蓄米放出で、減税に対する熱量が打ち消された。そればかりか、高負担路線が密かに進行し始めている。今国会で突然成立した年金改革法は高負担・財政健全化路線そのものと言える。具体的内容は、①国民年金の不足(就職氷河期の人々に対する給付を保証するために)を厚生年金資金で補填、②遺族年金の減額、③パート労働者への厚生年金の適用(家計と企業負担増)など、負担増給付減の法案であり、将来給付に欠損が生じた場合に消費税増税が正当化されることになる。

進行するステルス増税、高負担路線に回帰
また少子化対策の一環として2026年4月からスタートする「子ども・子育て支援制度」も、保険料を引き上げるステルス増税とみられる。独身者に対する不公平感から「独身税」と俗称されている。年収に対して2028年度には平均で0.2%の社会保険負担増になるが、それは年間社会保険料の5%増額と計算されており、消費税0.8%増税に相当するとの指摘がある。

>>続きはこちら(1.0MB)

株式会社武者リサーチ
武者ストラテジー   株式会社武者リサーチ
「論理一貫」「独立不羈」「歴史的国際的視野」をモットーに、経済と金融市場分析と中長期予想を目的とし提供していきます。
著作権表示(c) 2013 株式会社武者リサーチ
本書で言及されている意見、推定、見通しは、本書の日付時点における武者リサーチの判断に基づいたものです。本書中の情報は、武者リサーチにおいて信頼できると考える情報源に基づいて作成していますが、武者リサーチは本書中の情報・意見等の公正性、正確性、妥当性、完全性等を明示的にも、黙示的にも一切保証するものではありません。かかる情報・意見等に依拠したことにより生じる一切の損害について、武者リサーチは一切責任を負いません。本書中の分析・意見等は、その前提が変更された場合には、変更が必要となる性質を含んでいます。本書中の分析・意見等は、金融商品、クレジット、通貨レート、金利レート、その他市場・経済の動向について、表明・保証するものではありません。また、過去の業績が必ずしも将来の結果を示唆するものではありません。本書中の情報・意見等が、今後修正・変更されたとしても、武者リサーチは当該情報・意見等を改定する義務や、これを通知する義務を負うものではありません。貴社が本書中に記載された投資、財務、法律、税務、会計上の問題・リスク等を検討するに当っては、貴社において取引の内容を確実に理解するための措置を講じ、別途貴社自身の専門家・アドバイザー等にご相談されることを強くお勧めいたします。本書は、武者リサーチからの金融商品・証券等の引受又は購入の申込又は勧誘を構成するものではなく、公式又は非公式な取引条件の確認を行うものではありません。本書および本書中の情報は秘密であり、武者リサーチの文書による事前の同意がない限り、その全部又は一部をコピーすることや、配布することはできません。

このページのトップへ