2021年の景気拡大前に、投機化する米国金融
~日本株式の相対優位鮮明に~
【ストラテジーブレティン(266号)】
(1) 米国株式史上最高値更新、だが波乱のリスクも
無視できぬ景気回復頓挫のリスク
11月16日、米国株式S&P500、NYダウはともに史上最高値を更新した。だがしばらく乱高下のリスクも考慮するべきであろう。①コロナ第3波襲来、感染者・死者数増加、②ファイザー社、モデルナ社の高性能ワクチンの普及には半年以上かかる、経済への寄与にはそれ以上のラグが見込まれる、③米国経済の短期回復トレンドに停滞感、第4四半期GDPは下方修正される公算大、④財政による経済支援の停滞懸念、⑤FRBは緩和姿勢を強めるが、できることは限られている、マネタリーベースの伸びにブレーキ、⑥株式市場の投機性強まる、⑦投資家のリスクテイク意欲強まっている、等を注視したい。
コロナ感染は米国においても急増し、第3波が高まっている。これまで抑制されていた死者、重篤者も急増している(図表1)。地域によっては再度ロックダウンが打ち出される可能性が強まっている。ファイザー社、モデルナ社によるワクチンの開発が順調であることは好材料だが、その実用化には半年以上の時間がかかるとみられている。わずか数か月の治験では抗体の持続性、副作用等はやはり不確かである。むしろ足元の感染急増による、経済活動の停滞、消費者心理の悪化か懸念される。
ダラス連銀のスマホを活用した移動活動指数(モビリティー・エンゲージメント指数)によると、個人の外出、遠距離旅行等の活動は8月以降改善が止まっている(図表2)。ここに第3波の到来と消費者心理の悪化、経済対策の失効と空白が起きれば、経済回復のモメンタムが大きく崩れる公算が強まる。給与税減税、失業保険上乗せは必至であるが、新政権への移行が遅れており、空白が生じる懸念大である。対コロナ経済対策の多くが12月で期限切れとなり、家計・企業サポートが失われるリスクが高まっている。経済活動は、製造業などほぼ完全に回復したところと、回復の遅れが甚だしい空運、外食、エンタメ産業などとの格差が多く開いている。