昨日、日経平均株価は終値で4万5000円の大台に乗せた。これで早くも次の大台更新が視野に入ってきた。次の大台とは4万6000円ではない。5万円の大台である。
昨日、出演したBSテレビ東京の「NIKKEI NEWS NEXT」でも、堂々とカメラの前でフリップを掲げてきた。これほど公の場で「年内、日経平均5万円」の予想を出すのはおそらく僕が初めてだろう。
ちなみに今日の日経新聞夕刊『相場を読む』でも日経平均5万円の予想が掲載される予定である。(電子版ではすでに公開済み。「日経平均株価、年末5万円 マネックス証券の広木隆氏『相場を読む』 」会員限定記事https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB175XQ0X10C25A9000000/)
「日経平均が5万円になる」というのは自明のことなので、それは「予想」にはならない。5万円に行くか、行かないか、というのは行くに決まっているので議論の余地がない。もうこれまでに500万回くらい言っているけれど、株価というのは上がるようにできているので、いつかは5万円になるのである。さらに6万円になり、いつかは10万円にもなる。
だから株価の予想というものは、期限を区切ったものでなければ意味がない。つまり、いつまでに○○円になるとか、向こう1年間の株価の推移などだ。そうなると、その予想は俄然、難しくなる。当てるのはほとんど運みたいなものだ。偶然や不確実性、ランダム性の要素で決まるウエイトが多くなるからである。
株価は、基調としては右肩上がりに上がっていくが、そのトレンドの中心線の周りでランダムな動きをする。それはノイズのようなもので、短期的な株価の動きを予想するとはそのノイズを当てにいくようなものである。
それを百も承知で年末までに5万円になると僕が言い切るのは、その可能性が高くなってきたと思うからだ。僕の確信度を上げる材料がいくつも可視化されてきたからだと言い換えてもよい。
円高を伴わない米国の金融緩和
まず昨日のFOMC(米連邦公開市場委員会)だ。細かいことは抜きにして、FRB(米連邦準備制度理事会)が利下げを再開し、今後もさらに数回の利下げを示唆したというのに円高にならない。これが決定的な要因だ。米国の金融政策というのは世界のリスクマネーを左右するというのに異論を挟むものはいないだろう。米国の金融緩和はリスクオンの号砲を鳴らし、この点では無論、日本株にも追い風だが、日本株にとっては円高という懸念があった。
しかし、その懸念が現実のものにならないことが今回のFOMCで改めて確認された。従前から述べている通り、金利差云々よりも対米直接投資やデジタル赤字などを背景にした円売り圧力が勝る。百歩譲って金利差が要因だとしても、「金利差縮小で円高」などという議論はすでに時代遅れだろう。マーケットの時間軸は速い。FEDについて言えば、すでに利下げの終わりを見込んでいるし、日銀にしても利上げの限界を見込んでいる。いずれにせよ、年末に近づけば、FEDの利上げの終焉が見えてドルは一段と上昇し、その時にようやく日銀が利上げできるものと考える。そのような状況では日銀の政策がFED次第ということが改めて意識され、日銀の利上げで円を買うという動きは限られるだろう。
まとめると、円高を伴わない米国の金融緩和という絶妙の配材が日本株の追い風になるということだ。
2026年の米国景気は強さが増し、
日本企業の業績も増益転換するという蓋然性が高い
パウエル議長がいう通り、リスク管理的(いわば予防的)利下げのおかげで米国景気も大丈夫だろう。消費の強さからして利下げの必要がないのに利下げしている感もあって、米国景気は来年にはむしろ強さが増すだろう。今回のFOMCが示した経済見通しも米国の経済成長率は上方修正されている。
このような点を総合すると、来年度の日本企業の業績が増益転換するという蓋然性は高い。つまり、いまのコンセンサスの信頼度が増しているということだ。
現時点での日経予想(≒会社予想)ベースでは今期は6%減益だが、それ自体が保守的過ぎてアナリストのコンセンサスベースでは今期はマイナス1%程度。今後決算発表が進むにつれて微増益か、すくなくとも前期比横ばいくらいまでになるだろう。そして来期のアナリストのコンセンサスは13%増益だ。
これを日経平均のEPS(1株当たり純利益)にすると2960円となる。ざっくり3000円である。非常にわかりやすい。来期予想業績に基づけばPER(株価収益率)15倍が今の4万5000円である。PEマルチプル1倍で3000円に相当する時代になっているという感覚をぜひ皆さん、もっていただきたい。EPS3000円の時代では5万円はPER16.7倍である。極めてまっとうなバリュエーションで到達可能な水準だ。
日本株の強さの背景としては、このほかにも日本の政治の枠組みやフィジカルAIの進展による日本企業の強さが発揮されるシナリオなど、いくつも好材料があるが、それはまた追って述べていく。