それでも上昇していく日米株式市場の死角
足元の日米の株式市場をウォッチすると、日経平均をはじめ、TOPIXやNYダウ、S&P、そしてナスダック総合といった主要株価指数が最高値を更新する場面を見せるなど、好調な値動きとなっています。
もともと、「アフター米雇用統計」で迎えた今週ですが、その米雇用統計(8月分)の結果が労働市場の軟化を示す内容だったことで、米国の利下げ期待と同時に景気減速への警戒感も高まり、米国株が下落する一方、米債券市場や商品(金)価格が上昇するなど、やや複雑な初期反応となったほか、国内でも、先週末の7日(日)に石破首相が辞任を表明したことで、今後の自民党総裁選に向けた思惑が働くなど、政治的な不透明感が強まっていただけに、足元で見せている日米の株高基調は少し意外な印象かもしれません。
そのため、現在の株高の背景について冷静に材料を整理する必要があります。
まず、国内政治の動向については、「次期政権への期待を先取りした動き」という解釈もあるようですが、自民党総裁選がいつ、どのように行われるのかをはじめ、立候補者がまだ出揃っていないこと、新総裁が誰でどんな政策スタンスなのか、そして、少数与党であるために野党との協力関係を築けるのかなど不透明な要素が多いことを踏まえると、「思惑の先取り」だけで株高を継続するのは難しく、少なくとも「政治的不透明感が続いているあいだは日銀の利上げはないだろう」という見方で株が買い戻されていると見る方が自然かもしれません。
また、米国株の上昇については、引き続き米利下げ期待が相場を支えていることに加え、「AIを軸とした相場が再び盛り上がっている」ことが考えられます。
実際に、米オラクルが今週9日(火)に発表した決算では、8月末時点の受注残高が前期末(5月)から3.3倍と大幅に増加するなど、業績の急拡大がポジティブサプライズとなったほか、足元で売られていた米パランティア・テクノロジーズ株も、外資系金融機関(UBS)の強気なレポートを受けて再び上昇に転じたこと、そして、「ネオクラウド」と呼ばれるAIクラウド事業が注目され、コアウィーブなどの関連銘柄が物色されたことなど、AI需要が旺盛であることを示す材料が次々と出てきたことが株高につながっていると思われます。
こうした状況を背景に、足元の株式市場はさらに上を目指す展開も考えられますが、とはいえ、米景気減速への警戒感が解かれているわけではない点には注意が必要です。米株市場では、米労働市場の軟化から消費が減少するとの見方が根強く、消費関連株が下落する場面を見せているほか、景気や金利の影響を受けやすい中小型株で構成される株価指数(米ラッセル2000)の上値が今週に入って重たくなっていること、そして金価格も最高値を更新するなど、「リスクオフ」をにらんだ動きも確認できます。
確かに、「株価は不安の崖を登っていく」という相場格言がありますが、相場を牽引しているテック株がPER(株価収益倍率)の面で割高となっていて、企業成長(利益の伸び)と整合性がとれているのかの評価が定まっていないことや、株式市場が米国の景気減速を織り込みにいく可能性が残されていること、来週開催の米FOMC通過後の材料出尽くし感による売りをこなす必要があることなどから、足元の株高基調は来週あたりでいったん止まるかもしれないことは想定しておく必要があるかもしれません。

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