新型肺炎感染拡大 “抗ウイルス薬”と“5G”との接点
感染拡大が続く新型肺炎の“特効薬”となるのだろうか。
タイ保健省は去る2日、新型コロナウイルスによる肺炎の治療で、症状が劇的に改善した事例を見つけたと発表した。具体的にはバンコクにある国立病院の医師が中国人旅行客の重症患者に抗エイズウイルス(HIV)薬とインフルエンザ薬を併用して投与したところ、病状が回復しウイルス検査で陰性になったのを確認したのだという。
感染拡大を食い止める可能性があるグッド・ニュースだが、他方で我が国の研究者は「効果を確認するには動物実験などの基礎的な研究や、より多くの患者を対象にした臨床試験を通じて科学的な証拠を積み重ねる必要があり、現段階では慎重に見るべきだ」と指摘している[1]。
未だ原因不明の新型肺炎コロナウイルスだが、注目すべきなのが去る2002年に発生した重症呼吸器症候群(SARS)と去る2012年に発生した中東呼吸器症候群(MERS)である。
そもそもコロナウイルスは様々な動物に呼吸器疾患、消化器疾患、肝炎、脳炎など多様な疾患を引き起こすことが知られている。去る2002年から2003年にかけて発生したSARSは全世界で8,098名の感染者および774名の死者を出している。去る2012年に感染が確認されたMERSは発生後1年弱の時点では55人の感染確認に留まっている。
(図表1 SARSとMERSの患者数の推移)
(出典:ウイルス 第63巻 第1号[2])
どちらとも起源がコウモリであると考えられている点や重篤な肺炎を引き起こすなどの共通点がある。SARSが1人の感染者から多くの人に感染を起こすのに対し、MERSは散発的に感染を起こすもので、ヒトからヒトへは濃厚接触者を除いてほとんど起きないと考えられている。
こうした中で医療設備の不足を解消するために中国勢の武漢市内に去る4日(武漢時間)、わずか1週間の超突貫工事で「火神山医院」がオープンした。その翌日にはもう一つの病院「雷神山医院」も完成している。この病院の特徴は最先端技術の5Gによる「遠隔医療」を実現しているという点だ[3]。
(図表2 医院に構築された5Gネットワークによる会議システム)
(出典:ケータイWatch)
通信機器メーカーの華為技術(ファーウェイ)がこの病院建設を支援。新型肺炎支援プロジェクトチームを発足させ150人体制で、通信キャリアの中国電信(チャイナテレコム)などと連携して病院内の5Gネットワークを整備したのだ。
ファーウェイが提供したスマートディスプレイ、クラウドを利用した高画質なスマートビデオ会議システムによって、北京の専門家が現場の医療スタッフを補助するという「遠隔診療体制」が実現した。診察効率の向上と、医療スタッフの負担軽減が期待できるということで、病院内で使用する医療用ワゴンにもビデオカメラを搭載して、医療スタッフと患者の直接接触を減らしながらも診察を行うことができる。
こうした緊急時でも迅速に動き自社の技術を広めるあたり、いかにもファーウェイらしい。
グローバル・インテリジェンス・リサーチャー
王 鵬程 記す
[1] https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55159240S0A200C2FF8000/参照
[2] 水谷哲也「新種のコロナウイルス」(東京農工大学農学部附属国際家畜感染症防疫研究教育センター
ウイルス第63巻 第1号 2013年 所収)第1-6頁 参照
[3] https://k-tai.watch.impress.co.jp/docs/news/1233110.html?fbclid=IwAR1unAiUzelb6-C0kycPNzLCuDLllHa3u9fQ8dj2kFkYI08h9Izs9pOar0U参照
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