5Gマーケットがアナログ回帰へと誘うという逆説 ~お披露目前から陰りが見え始めた6Gがもたらすものとは~

2019/05/16

はじめに

いよいよ次世代型の通信方法である5Gがスタートすると国際的な話題になっている。
5Gは従来の通信方法とは全く異なり、特に通信速度が優れていることは言うまでもない。簡単に言えばこれまでインターネットで映画をダウンロードしようと試みてWi-Fiを使っても何分と掛かっていたのが5Gならば数秒で済んでしまうというのだから驚きである。それだけではなく5Gは様々な分野でも応用が可能であると言われている(※1)。例えば5Gは低遅延も強みであり、その安定した通信環境が医療機器や車の自動運転といったリアルタイム性が問われる世界で活用できると注目されている(※2)。さらには通信機器の遠隔操作が容易になったり、複数機器の同時接続が可能になったりすることもメリットとして挙げられている。
「モノのインターネットIoT」という言葉が世を席巻し始めてからまだ何年経っていないにもかかわらず、加速し続ける通信の世界はさらに脅威を増していると言える。通信速度が加速化されることでまず裨益することになるのはインターネットで飯を食う業界であることは間違いない。例えばアップル(※3)はIPhoneで有名であるが、5G対応機器を生産することが利益になるであろうし、通信速度が加速することでGoogle(※4)はその傘下である動画サイトYouTubeの利用価値がさらに上がるのではないだろうか。同じく映像物という観点から言えば、Netflix(※5)やAmazonの動画配信サーヴィスもより一層の人気を博することが予想できる。5Gの登場がこういったインターネット業界の王者たちが裨益する機会を与えることになる蓋然性は高いと言えるだろう。

他方で先述した通り5G技術は通信機器の遠隔操作を可能にするだけでなく、その低遅延性が注目されている(※6)。医療機器の進歩は手術の成功可能性を引き上げる意味でも重要であるのは自明であり、例えばオリンパス(証券番号:7733(※7))が日本では有名である。手術中の危機の停止は場合によっては命を左右する危険性もあることから、5Gによって通信精度が安定することは大きな意味を持つことになる。他にあるのは自動運転システムの精度の向上だ。既に日本の大手メーカーも自動運転アシストなる危険防止装置を備えた最先端の自動車をリリースしている。例えばトヨタであればAI搭載カーの開発も目指しており、いずれは自動車運転の全てが自動化されることも夢ではないと言われている(※8)。そうなれば今巷で問題となっている高齢者ドライバーの事故の問題が無くなることに加えて、雇用の調整弁として重要なタクシードライバーの存在に対して大きな意味を持つだろう。最終的には免許制度そのものの存在意義を問われかねないインパクトすら持つのがこの5G技術であると考える。

5Gマーケットの失速 ~6Gは幻想か~

デジタライゼーションの時代ともいえるのが現代社会の特徴の1つである。もはやスマートフォンを片手にYouTubeで動画を見る光景も決して珍しくはなくなった。日本国内のみならず世界的に5G導入の動きは加速しており、各国が技術開発にしのぎを削っている。特に米国、韓国あるいは中国が先進的であり、通信会社大手も力を入れている分野である(※9)。しかしながら5Gがもたらすものは必ずしも良いことばかりではない可能性があるのだ。
5Gによる通信網を構築するためには電波を発信する塔が設置される必要がある。そして5G通信が整備された環境にいるということは当然ながら電波に囲まれた環境にいざるを得ないことになる。実は5G通信の環境に居続けることの健康への影響が懸念されているのである。5G通信の環境下にいることで人間の脳に、悪影響があるのではないかという指摘がなされており(※10)、導入するべきではないのではないかという議論まで出始めているのだ。いよいよ5Gの次は6Gかという動きもあっただけに、どこまで具体的な影響があるのか立証を待たずしての5G導入が進むのか、各国の動向は注視する必要があるだろう。
さらに5G、そして続く6Gの導入が電離層を破壊し地球環境そのものへ甚大な影響をもたらす可能性すら懸念されているのである(※11)。そのようになった場合、5Gは我々の生活を便利かつ豊かにしてくれる存在というよりもむしろ命取りになりかねないという危険性があるのだ。そうであればこれからマーケットを含め、我々にとって重要になるのはデジタルというよりもむしろアナログな世界にあるのではないかと考えられる。例えばスマートフォンよりもガラパゴス携帯といったレヴェルにまで回帰する可能性すら考慮に入れるべきだろう。あるいはインターネットを介さない交流手段といった部分まで検討することも今後の通信技術を取り巻く環境を考えれば考えないわけにはいかないだろう。

おわりに ~本来の自然な姿への回帰という可能性~

ここまで述べた通り現状かなりもてはやされていると言っても良い5Gではあるが、人類への影響如何ではむしろ衰退の一途を辿る可能性すらある。よって関連産業でいっても勝ち組と負け組が出かねないことが分かってくる。「通信」そのもので稼いできたインターネット王者たちはむしろ5Gの衰退と共に凋落を見せ始める。例えばYouTubeやNetflixといったストリーミング技術が要の勢力には厳しい環境になる。他方で半導体メーカーや通信機器を物理的に製造する企業にとっては、影響はそれほどではないだろう。仮にスマートフォンの登場の際に生じた通信機器の刷新が改めて行われることになればむしろ京セラ(証券番号:6971(※12))村田製作所(証券番号:6981(※13))といった我が国の製造メーカーにとっては朗報といえる。
果たしてこのような通信業界の展開可能性を前にして、他にどのようなシナリオが考えられるだろうか。あり得るのはブロックチェーン技術を利用することだ。 実はブロックチェーン技術を利用した通信方式では必ずしもインターネットを介する必要がないのである(※14)。 この通信技術を採用するためにはそもそもやり取りをする双方がお互いのことを認知し、オフラインで知り合っていることが前提になる以上、関係性の構築という点でもインターネット時代の次のアナログな世界が我々を待ち受けている。このブロックチェーンはセキュリティ面がしっかりしている(※15)。セキュリティ面での優位性ゆえ、仮想通貨の技術にも利用されているというわけだ。ブロックチェーン技術でいえばわが国ではNTT(証券番号:9432(※16))を筆頭に各企業がブロックチェーン技術の研究を行っている。無論、ラジオや無線機といった業界もインターネット以後の我が国で光を見る蓋然性が高い業界だ この分野では例えばソニー(証券番号:6758(※17))といったところが我が国を引っ張ってきた企業である。 現状5Gがこれから導入されて行くという潮流にある中で意外にもアナログこそが最終的にたどり着く答えであるという選択肢もあって然るべきである。

*より俯瞰的に世界情勢やマーケットの状況を知りたい方はこちらへの参加をご検討ください(※18)

※1 https://www.nelco.com/ja/5g-casestudy/
※2 https://www.nelco.com/ja/5g-casestudy/
※3 https://stocks.finance.yahoo.co.jp/us/chart/AAPL
※4 https://stocks.finance.yahoo.co.jp/us/chart/GOOG
※5 https://stocks.finance.yahoo.co.jp/us/chart/NFLX
※6 https://www.nelco.com/ja/5g-casestudy/
※7 https://stocks.finance.yahoo.co.jp/stocks/chart/?code=7733.T
※8 https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1086316.html
※9 https://iphone-mania.jp/news-199233/
※10 https://tocana.jp/2019/04/post_91649_entry.html
※11 https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/12/gps-2.php
※12 https://stocks.finance.yahoo.co.jp/stocks/chart/?code=6971.T
※13 https://stocks.finance.yahoo.co.jp/stocks/chart/?code=6981.T
※14 https://fintide.jp/blockstream-satellite-api/
※15 https://japan.zdnet.com/article/35107085/
※16 https://stocks.finance.yahoo.co.jp/stocks/detail/?code=9432.t
※17 https://stocks.finance.yahoo.co.jp/stocks/detail/?code=6758.t
※18 https://haradatakeo.com/ec/products/detail.php?product_id=3194

株式会社原田武夫国際戦略情報研究所
トムソン・ロイターで配信され、国内外の機関投資家が続々と購読している「IISIAデイリー・レポート」の筆者・原田武夫がマーケットとそれを取り巻く国内外情勢と今とこれからを定量・定性分析に基づき鋭く提示します。
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