大規模な銘柄ローテーションが始まった
23日のジャクソンホールのパウエル議長の講演は、「政策を調整すべき時が来た」と次回のFOMC(9/17-18)での利下げを示唆する内容でした。以降にも、サンフランシスコ連銀のデーリー総裁が「政策を調整する時が我々に訪れた」、リッチモンド連銀のバーキン総裁が「労働市場が冷え込みつつあるため金利を下げる調整を指示する」、とパウエル議長講演を追認しており、FRBが政策転換に踏み出すことが確実視されています。21日に米労働省は昨年4月から今年3月までの1年間の雇用統計における非農業部門雇用者数を当初公表数値より合計で81.8万人の下方修正になると公表しており労働市場に対する危機感も強まっています(各月の詳細に関しては来年2月に公表予定である)。
パウエル議長の講演を受けて23日の米株式市場は上昇しました。為替は26日に143円台/ドル、米10年国債利回り3.7%台にまで下落しました。他方で日本株は、週明けの26日に円高を受けて日経平均株価は▲254円安となりました(ただし、27日は為替が144円台後半まで円安に戻したことから+178円の上昇となっている)。
日米金利差縮小によって少なくとも過度な円安は解消される方向にあります。円安によって輸出企業が持てはやされてきましたが、実は輸出は決して好調ではないという不都合な真実が白日化される可能性が指摘されます。21日発表の7月の貿易統計(日本)において、輸出は金額ベースで+10.3%でしたが、数量指数では▲5.2%とマイナスでした。数量指数はこの数年間殆どの月でマイナスとなる傾向にありました。7月の為替レートは159.77円(前年同月は142.32円)でしたが、8月から円高に振れており、円安効果の剥落によって(早ければ8月分からでも)金額ベースでも輸出が前年同月比マイナスに転落する可能性が示唆されます。
輸出関連から内需関連へとポートフォリオの組み換えが足もとでも生じつつあるように思えますが、9月には一段と加速することも考えられます。また、内需株の多いグロース市場は長らく光が当たりませんでしたが、バリュエーション調整が大きく進んでいることもあり、反騰局面が目先続くと考えます。前回のコラムでも「ポートフォリオの中身を大きく見直すタイミングに来ているのかもしれない」と述べましたが、大規模なローテーションが本格化しつつあると考えます。
この記事を書いている人
藤根 靖昊(ふじね やすあき)
- 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
- 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
- 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。