円高は日本株にはマイナスだが、局所的には異なる可能性も
19日の日経平均株価は、前週末比▲674円と下落しました。米雇用統計が過去に遡及して下方修正されるとの噂から円高・ドル安に振れたことが要因です。ドル円は一時145.20円まで下落しました(終値は146.08-10円)。翻って本日(20日)はドル円が147円台と円安に大きく戻したことから日経平均株価は+700円超の上昇となっています(14時現在)。
為替と株価の関係をあらためて整理しておきたいと思います。
米雇用統計の下方修正は、米国経済の減速を示すものではありますが、米国株式にとっては(少なくとも現状は)市場の利下げ期待が高まることからむしろプラス要因となっています。他方で米利下げ期待が強まることは日米金利差の縮小から円高要因となります。
日本株にとっては、(少なくとも過去においては)円安の方が優位性が高くなっている。これは主力株である輸出(およびグローバル)企業の利益が円安によって膨らむことだけでなく、輸入物価の上昇を通じてインフレ率が上昇することで株価が嵩上げされるという効果があげられます。ただし、円安は大手製造業と政府の税収にとってはメリットがあるものの、物価上昇による実質賃金の低下を通じて家計にとってはマイナスとなります。その結果、消費が停滞することから内需企業にとっては(インバウンド特需を除けば)マイナス要因です。
円安が160円台にまで進んだ際に政府が大規模な為替介入を実施したことが象徴するように過度な円安は長期的に日本経済を棄損する可能性が高い(特に近年では円安でも輸出数量がマイナス傾向にあり、円安メリットが経済全体に広がらない)。
しかしながら、株式市場にとっては依然として円高は逆風になりやすい。
ただし、全体と部分では必ずしも同じ動きをするとは限りません。昨日、プライム市場が大きく下げる中でも、グロース市場はプラスでした。内需型の非製造業が多いグロース市場は円高のデメリットを受けにくいことに加えて、主力株からの資金シフトが生じる可能性も考えられます。
9月のFOMC(9/17-18)においてFRBの利下げは確実視されています。日銀は9月の会合(9/19-20)では追加利上げを見送ると予想されていますが、将来的には利上げが見込まれており、日米金利差縮小から円高圧力は高まっています。マーケットの上げ下げに一喜一憂しているよりもポートフォリオの中身を大きく見直すタイミングに来ているのかもしれません。
この記事を書いている人
藤根 靖昊(ふじね やすあき)
- 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
- 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
- 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。