円安の持続から日本株の高止まりは維持されるが、6月頃がトレンド転換か!?
18日の日経平均株価は+1,032円の大幅高となりました。朝方に発表された中国工業生産(1-2月)が前年同期比+7.0%となったことも好感されたと考えますが、何より「マイナス金利解除決定」と大きく報じられたことが決定的でした。
本日(19日)の日銀金融政策決定会合において、市場の予想通りに、マイナス金利解除(政策金利0.0~0.1%)に加えて、イールド・カーブ・コントロール(YCC)の撤廃、ETFの買い入れ終了も決定されました。日銀の金融政策の正常化は、デフレからの脱却として市場にポジティブに迎えられましたが、株価は既に24年度(来期)の企業業績は十分に織り込んだ水準にあると考えられます。
日本株の株価水準はこれまで何度も述べてきましたが、割高(かなり先を織り込んでいる)にあると考えます。ただし、米国金利の高止まりから円安が継続すると見られることから、FRBが利下げに向かう時期(早くても6月)までは強含みに推移する余地も大きそうです。
米国のインフレ率は低下トレンドが緩慢であり、そのためFRBは利下げには慎重になっているようです(その点は、20日のパウエル議長の記者会見に注目する必要があります)。
2月の米消費者物価指数(12日発表)は前年同月比+3.2%と1月(+3.1%)から上昇しました。2月の米生産者物価指数(14日発表)は前年同月比+1.6%と1月(+1.0%)から大きく上昇しています。11日公表のニューヨーク連銀消費者調査(2月)では、3年先の予想物価上昇率が+2.7%と1月(+2.4%)から上昇しています。
他方で、米国の経済減速を示す指標が増えつつあります。14日発表の米小売売上高は1月分が▲0.8%から▲1.1%へと下方修正されたことに加えて、2月は+0.6%と回復しましたが市場予想(+0.8%)は下回りました。15日発表のミシガン大学消費者態度指数(3月)は前月の76.9から76.5に若干悪化。同日発表のニューヨーク連銀製造業景況指数(3月)は2月の▲2.4から▲20.9へと急激な悪化となっています。
今後も、米経済の減速感を示す指標が増える可能性がありそうです。その結果として、米国株の上値は硬直的になる可能性が考えられます。日本株の活況はまだしばらくは続くかもしれませんが、米経済の減速感の顕在化と円安から円高への転換が生じるタイミングでは、調整を余儀なくされると考えています。現状ではFRBの利下げが見込まれている6月~7月には注意が必要と考えます(あくまでも想定であり、時期はもっと早まるかもしれません)。
こうした調整が一時的なものであるのか、大きな変調であるのかは分かりませんが、調整後の物色対象は輸出型から内需型へ、大型株から出遅れ感の強い小型株へと転換すると想定しています。
この記事を書いている人
藤根 靖昊(ふじね やすあき)
- 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
- 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
- 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。