切っ掛けはともかく、高過ぎたことが調整の理由~調整後は物色対象が変わる!?

2024/03/12

 

11日に日経平均株価は、前週末比868円下落し、3万8千円台となりました。下げ幅は一時1,100円超にも達しました。8日発表の米雇用統計(2月)が下落の切っ掛けでした。失業率が3.9%と前月比0.2pt上昇したこと、平均時給の伸びが前月の伸びを下回ったこと、1月の非農業部門雇用者数が大幅に下方修正されたこと。これに伴い市場の(FRBの)利下げ想定時期が7月から6月に前倒しされ、米長期金利が下落し、ドル安・円高に為替が振れました。
また、12日から14日に春闘における組合案に対する企業側(大企業)の回答が予定されておりますが、要求案に近い回答がなされるとの観測から3月(18-19日)の会合で日銀のマイナス金利解除が行われるとの見方が強まったことも円高の要因として挙げられます。

米国経済の減速、日銀のマイナス金利解除ともに幾ばくかのタイミングの違いはありますが既定路線であると言えるでしょう。3円程度の円高も狼狽えるほどのものではないと考えます。結局は、株価の割高感に対する警戒が市場参加者の深層心理にあり、それが具現化したことによる調整と考えます。

アナリストコンセンサスEPS(3/8現在)の伸び率は24年度+13.8%、25年度+12.0%です。この前提が崩れないとするならば、日経平均株価4万円超の水準は、25年度以降の企業業績が視野に入る今年の年末頃には十分に正当化され得ると考えます。仮に前提条件(米経済のソフトランディング等)に疑義が生じるとしても、それは早くても数カ月先になると思われます。そう考えるとここは絶好の押し目となる可能性もありそうです。なお、押し目の水準(=下落幅)に関してはテクニカルで考えたほうが良さそうではありますが、筆者は門外漢なのでここでは触れません。
ただ、考慮すべきは大きな調整が入ることで物色対象に変化が生じる可能性です。半導体関連・自動車など輸出関連が相場をけん引してきましたが、一旦は他の対象に投資家の視線が向かう可能性が指摘されます。出遅れ感の大きい小型株にはチャンスが大きそうに感じます。

今週は、12日:米消費者物価指数(2月)、14日:米生産者物価指数・米小売売上高(2月)、15日:ミシガン大学消費者態度指数(3月)などが注目されます。米景気減速を示すような内容によっては一段と相場が下押しする可能性もあると考えます。いずれにしても来週の日銀金融政策決定会合、米FOMC(19-20日)を控えて(上方に対する)膠着感の強い展開が今週は続きそうです。

 


 

 

この記事を書いている人

藤根 靖昊(ふじね やすあき)

  • 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
  • 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
  • 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。
アイフィス・インベストメント・マネジメント株式会社
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