多少のサプライズでは市場の楽観的なセンチメントは崩れない!?

2024/02/06

 

1月30-31日の米FOMCでは予想通り政策金利は据え置かれましたが、声明には「より確かな自信を得るまでは利下げは適当ではない」との表現が盛り込まれました。パウエル議長はさらに「3月会合まで確信できるレベルに(物価が)達する可能性は低い」と会見で踏み込みました。これを受けて31日のダウ工業株平均は5日ぶりに大きく反落しました。

2日発表の1月の米雇用統計において、非農業部門雇用者数は前月比35.3万人増と市場予想(18万人増)を大幅に上回りました。なお、12月分は21.6万人増から33.3万人増へと大きく改訂されています。雇用統計を受けて米国金利は大きく上昇、株価もいったんは下げたものの、米国経済のソフトランディング期待が高まったとして2日は反転して終わっています。

米雇用統計は極めて強い内容であったものの、他の雇用関係の統計とは乖離が生じているように見受けられます。雇用統計の前日(1日)に発表されたADP雇用リポートにおいては、12月分は前月比16.4万人増から15.8万人増に下方修正されたうえ、1月は予想14.5万人増に対して10.7万人増にとどまっています。また、同じく1日に発表された週間の新規失業保険申請件数(1/22-27分)は、予想20.9万件に対して22.4万件と上回りました。継続受給者数も189.8万件と予想(187.2万件)を上回ったことに加えて、3カ月前(10/22-28:181.2万件)の水準よりもやや増加しており、雇用統計とは異なった動きを示しています。ただし、雇用動態調査(JOLTS)は雇用統計と整合的であり、12月の求人数は902.6万件人と11月の879.0万件より大きく増加しました。

こうした乖離がどうして生じるのかは分かりませんが、これ以外にも発表される米国統計は、強弱が入り混じっており、斑模様の様相にあると見受けられます。しかし、強弱いずれの場合も株式市場は金利低下またはソフトランディングと常に良いとこどりをしております。大統領選の年は株式は強い、というアノマリーに市場参加者が傾倒しているようにも感じられます。

日本株も、米国株の増勢と円安から依堅調に推移しています。米国株が大きく崩れない限りは高止まりが続くように見受けられます。ただし、中東情勢は足元で米国の親イラク勢力への報復的な攻撃によって戦闘範囲が拡大しており、地政学リスクは強まっています。中東情勢と原油価格の動向には注意を払っておきたいと思います。

 


 

 

この記事を書いている人

藤根 靖昊(ふじね やすあき)

  • 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
  • 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
  • 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。
アイフィス・インベストメント・マネジメント株式会社
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