金利低下の織り込みが進み、景気悪化に視線が向かうときに相場は反転する

2023/12/05

 

先週の米国株市場ではNYダウ平均が週間で855ドル上昇し、週末終値は36,245.5ドルとなり、終値ベースでの年初来高値(35,630.68ドル:8/1)を大きく突き抜けました。一方で、上昇ペースが急ピッチであったのか、過熱感に対する不安も台頭しているようです。上昇をけん引してきたのが、「マグニフィセントセブン(M7)」と呼ばれるアマゾン、アルファベット、マイクロソフト、エヌビディアなどですが、特定銘柄への依存した歪な相場形成であることや、市場のFRBの利下げ観測が“先取り”しすぎている面に懸念を覚える向きも強まっているようです。

ここにきて経済指標の弱さが色濃くなりつつあるようです。11月27日発表の米新築住宅販売は、9月分が下方修正されたうえ、10月も前月比▲5.6%と市場予想(▲4.8%)を下回りました。28日発表のコンファレンスボード消費者信頼感指数もまた10月分が下方修正されました。11月は上向いたものの修正前の10月を下回っています。12月1日発表のISM製造業景況指数は、11月は46.7と前月と同じでしたが、市場予想を下回り、13カ月連続で50割れとなっています。

日本株は、大幅高となった米国株市場とは対照的に、先週は週間では若干の下落となりました(日経平均株価で▲194円)。日本株は、金利低下メリットが顕著な米国株とは異なり、米国の金利低下は円高につながるデメリットがあげられます。また、中国経済の停滞の影響も強く受けています。さらには、ここにきて自民党の政治資金パーティー収支問題という国政への不透明感が持ち上がっています。
人質交換による一時停戦が解け、イスラエルがガザ全域への戦闘を強化することによって、中東情勢の混迷に対する危惧も強まっています。3日には紅海上の商船が砲撃を受けました。イエメンの武装勢力フーシー派(イランが支援?)によるものと見られています。原油価格は需要減退からNY原油は73ドル台と比較的低位にありますが、楽観しすぎているようにも見受けられます。また、前回も申し上げましたが日本株はバリュエーションの面からも強気にはなりにくい面があります。

今週は、5日:米雇用動態調査(10月)、ISM非製造業景況指数(11月)、8日:米雇用統計(11月)などの指標発表が予想されています。引き続き、公表された数値とそれに対する市場の反応(の仕方)には注目したいと思います。米国の金利低下トレンドはある程度は織り込まれたと考えられ、市場は金利よりも景気(悪化)に反応しやすくなるように感じています。

 


 

 

この記事を書いている人

藤根 靖昊(ふじね やすあき)

  • 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
  • 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
  • 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。
アイフィス・インベストメント・マネジメント株式会社
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