なし崩し的なYCC修正はさらなる円安を呼ぶか?

2023/10/31

 

日銀金融政策決定会合(30-31日)において、長短金利操作の再修正が行われました。前回(7/27-28)に0.5%をメドとし、債券買い入れの上限を1.0%としておりましたが、メドを1.0%とし、長期金利がそれを超えることも容認し、国債買い入れは柔軟に行う方針が示されました。
また、31日公表の日銀「展望リポート」において物価見通しを、23年度2.5%→2.8%、24年度1.9%→2.8%、25年度1.6%→1.7%に引き上げられました。24年度は大幅な引き上げとなりますが、原油価格上昇とそれに対する政策対応の反動によるとされていますが、もう一段の金利操作の修正が予感されます。

31日の国内株式市場は前日の米国株の大幅高があった一方で、日銀の政策再修正から小幅な上昇にとどまりました。米FOMCの結果発表を翌日(1日)に控えていることも影響していると考えられます。

さて、今回のFOMCでは利上げは見送られるというのが市場のコンセンサスです。しかし、7-9月の米GDPが前期比年率+4.9%と再加速したことや、新築住宅販売件数(9月)、小売売上高(9月)など市場予想を上回って好調であったことなど強い経済指標が示されており、FRBは今後の利上げカードを温存すると見られております。
そのため、米長期金利の高止まりは継続すると思われ、円安ならびに国内長期金利上昇への圧力は続くものと考えます。

原油生産に影響が生じていないことから、中東情勢への懸念が後退しているように見えますが(市場が慣れた面もあるのかもしれませんが)予断を許さない状態には変わらないと思います。また、米下院議長にトランプ支持者のマイク・ジョンソン氏が選出されたことからウクライナ支援を巡る問題から米議会の混乱も続きそうです。11月中旬に暫定予算の期限が再び訪れることから政府機関閉鎖への懸念が顕在化しそうです。

中国では不動産大手である碧桂園がデフォルトに該当するとされ、また中国恒大集団の清算審理も行われております。31日発表の中国製造業購買担当者景気指数(10月)は前月から0.7pt低下し、49.5と再び50割れとなり、景気減速が懸念されます。
さて、今週はFOMCに加えて、31日:コンファレンスボード消費者信頼感指数、1日:ISM製造業景気指数、3日:雇用統計(いずれも10月分)と米国の主要指標の発表が続きます。
週末の3連休を控えて不安定な株式市場がまだ継続しそうな様相です。

 


 

 

この記事を書いている人

藤根 靖昊(ふじね やすあき)

  • 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
  • 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
  • 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。
アイフィス・インベストメント・マネジメント株式会社
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