中国経済の減速が顕著化、米国も信用収縮によるリセッション懸念が残る

2023/08/15

 

中国の経済減速が誰の目にも明らかになってきた。9日発表の中国貿易統計(7月)において、前年同月比で輸出▲14.5%、輸入▲12.4%といずれも2桁減でした。9日発表の7月の中国消費者物価指数は、前年同月比▲0.3%と21年2月以来のマイナスとなりました。同日発表の卸売物価指数では▲4.4%と6月(▲5.4%)よりは上向いたものの10か月連続のマイナスでした。
10日発表の中国新車販売(7月・輸出含む)は▲1.4%と6カ月ぶりのマイナスとなりました。国内向けに限れば▲6.3%のマイナスです。
15日発表の中国工業生産(7月)は前年同期比+3.7%と6月(+4.4%)から鈍化しました。社会消費品小売総額(7月)も+2.5%と6月(+3.1%)から鈍化しています。1-7月の固定資産投資は前年同期比+3.4%とやはり1-6月(+3.6%)と減速しています。15日に、中国人民銀行は市中銀行向けの短期金利を2.65%から2.50%へと引き下げましたが、景気のテコ入れにはさらなる追加施策が求められるように感じます。

米国経済は底堅いと伝えられておりますが、S&Pグローバルは1-7月の米国での倒産件数が402件と前年同期の約2倍に達したと発表しています(7日)。
8日発表のニューヨーク連銀四半期報告書において、4-6月の米家計のクレジット債務残高は過去最高に達し、延滞率は7.2%と前年同期から2.44pt上昇しました。

10日発表の米消費者物価指数(7月)は前年同月比+3.2%と6月(3.0%)から上昇しました。市場予想(+3.3%)を下回ったとして株式市場では好感されましたが、足もとで原油価格が上昇していることを考慮すればインフレ鎮静化は楽観はできないと思われます。11日発表の米生産者物価指数(7月)は前年同期比+0.8%と市場予想(+0.7%)を上回りました。FRBはインフレ率抑制に向けて(追加利上げは行わなかったとしても)現状の金利水準を維持する可能性は高いと見られています。15日に7月の米小売売上高が発表されますが、市場予想(前月比+0.4%)を下回ると、現在は大きく後退したリセッション懸念が再び台頭する懸念もありそうです。

米国の長期金利が上昇しています。要因は良く分かりませんが(リセッション懸念の後退による景気回復?それとも銀行の融資姿勢の厳格化?)、米金利上昇によって円安が加速しています。日銀は前回の会合でYCCの修正を行いましたので、当分は(円安に対応する)動きがないと見られています。足もとの原油や天然ガス価格の上昇と相俟って、悪い円安となる懸念が残ります。17日に7月の貿易統計が発表されますが、7月上中旬分速報(8日)では輸出はマイナスです。

中国の日本向け団体旅行の解禁(10日)や、4-6月の国内GDPが実質年率換算で+6.0%と予想(2.41%)を大きく上回ったことなどが株式市場で好感されておりますが、先行きはまだ不透明感が強いと考えています。

 


 

 

この記事を書いている人

藤根 靖昊(ふじね やすあき)

  • 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
  • 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
  • 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。
アイフィス・インベストメント・マネジメント株式会社
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