楽観論(インフレ鎮静化・リセッション回避)優勢の中で、来期以降の業績も視野へ
今週は、米FOMC(25-26日)、ECB理事会(27日)、日銀金融政策決定会合(27-28日)と3つの主要中央銀行の政策会合が集中します。市場では、FOMCでは+0.25%利上げ、ECBでは+0.25%利上げ、日銀は変更なし、が大方の見方です。波乱が生じる可能性は低いと考えますが、市場は楽観論(インフレ鎮静化・リセッション回避)を背景に株価上昇を続けてきただけに波乱要素を残していると考えます。
米ダウ工業株30種平均は24日(月)まで11連騰となり、最高値を更新中です。この間の上げ幅は1,676ドル(+4.97%)となりました。6月の米消費者物価指数(12日)が市場予想を下回る前年同月比+3.0%に低下したこと、米卸売物価指数(13日)が前年同月比+0.1%と20年8月以来の水準に低下したことからインフレ懸念が鎮静化しました。その一方で雇用情勢は底堅く低失業率が続いており、リセッションには陥らないとのある意味“良いとこどり?”の状況にあるようです。市場では7月のFOMCでの利上げで打ち止めになるとの見方が強く台頭しています。
FOMC後の記者会見においてパウエル議長は、「今後の利上げはデータ次第」との姿勢を堅持するものと見られておりますが、株式市場の上昇による資産効果が強まる可能性に対してけん制的になるとの懸念もあります。ただ、その場合でも一時的に株価調整が生じるとしても利上げの最終局面であることには変わらないことから楽観論優勢の状況が続きそうです。
今週は米ハイテク大手の4-6月期決算(25日:マイクロソフト、アルファベット、26日:メタ)が予定されています。
また、27日にはFRBなど米金融当局が銀行の自己資本規制強化案を発表する予定です。規制強化により銀行の融資姿勢が後退することが懸念されています。銀行の融資姿勢に関しては、31日にFRBが融資担当者調査を公表する予定です。ちなみに、17日に発表されたニューヨーク連銀の調査では融資審査落ちの比率が6月は21.8%と2月比4.5ポイント上昇していました。
さて、日銀の金融政策決定会合では、イールドカーブ・コントロールを一部調整するとの見方もあり、実際に行われればサプライズ(株安要因)になると思われます。ただ、変更が無ければ欧米が利上げする中で、日銀が金融緩和を維持することで円安が進行する可能性が強まると考えられます(株高要因?)。
FRBの利上げが最終局面に入っていることで、今後は経済指標に対して良い内容はポジティブに、悪い内容にはネガティブに株式市場は反応することが増えると考えられます。日米ともに株価バリュエーション面での割安感はありませんが、リセッション懸念が後退することで来期以降の業績に視線が向かうことも考えられます。
足元では小型成長株よりも大型景気敏感株の優勢が続きそうです。
この記事を書いている人
藤根 靖昊(ふじね やすあき)
- 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
- 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
- 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。