危うい高値更新、ここからは小型成長株にポジションも
まずは前回と同様に19日時点のアナリスト・コンセンサス予想を確認したいと思います。19日時点の今期ベースの予想EPSは1,779.99円(前週比+16.14円)、これは3月末時点(来期)では1,773.79円でした。来期ベースは1,932.36円(同+15.70円)、これは3月末時点(再来期)では1,925.85円でした。僅かではありますが決算発表前(3/31)の数値を上回っています。これが、日経平均株価が3万円台を回復した第一の要因であると言えるでしょう。
これに加えて、バフェット氏の日本株への積極姿勢、東証のPBR1倍割れ企業に対する計画書の提出要請、日銀の金融緩和継続が、株価押し上げの支援材料となっています。さらに、米地銀の信用リスクの高まりや米連邦債務上限引き上げ問題などから相対的に金融不安の小さな日本への海外資金のシフトが生じたことも挙げられます。物価上昇率に対する金利の小さな日本は実質的な緩和効果(実質マイナス金利)が高く、3月末から0.3ptマイナス幅を広げたことも影響したようです。米国債利回りは一時期よりは低下したものの、実質金利差は広がっており、それが円安・ドル高を促した模様であり、それも株高につながっています
筆者は、欧米市場の景気減速ならびに中国の回復期待を慎重に捉え、23年度の企業業績に殆ど期待を抱かなかったのですが、結果としては市場の動きを見誤ったことになりました。インプライド・リスク・プレミアムから逆算した日経平均株価の妥当レンジは前回のレポートからさらに上昇して29,880円~32,130円となっています。
しかし、現在のコンセンサス予想(業績)の水準にはいまだに違和感を拭えません。「今年は東証からの要請もあり、(企業の)業績予想が従来ほどは保守的でなかった可能性がある」という指摘も市場には存在するようです。
米FRBは6月のFOMCでは様子見のために政策金利を据え置く可能性は高いと考えられるが、利上げが終了したとはまだ言い難い状況です。タカ派のブラード総裁(セントルイス連銀)は、FOMCはあと2回の利上げを余儀なくされるだろうと述べています。米連邦債務の上限問題も最後まで縺れそうな様相です。
米利上げは米地銀の信用リスク不安を掻き立てるだけに、FRBは利上げには慎重にならざるを得ないと考えますが、インフレ率の高止まりが続けば米経済の停滞が長期化するリスクも考えられます。円安によって輸出関連企業が買われていますが、4月の貿易統計(18日発表)において輸出数量指数は7ヵ月連続のマイナス(▲6.2%)となりました。
株価に対して強気スタンスを持っている方でも日経平均株価32,000円を上回る展開は現時点では描きにくいものと考えます。
大型主力株が一服するような展開となれば、出遅れが顕著な小型成長株に物色が循環することも考えられます。難しい局面ですが、小型成長株にも目を向けるタイミングと考えます。
この記事を書いている人
藤根 靖昊(ふじね やすあき)
- 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
- 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
- 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。