米CPI発表とFOMC通過で一旦悪抜け!
前週のNYダウ工業株は週間で953ドルの下落となり、9月下旬以来の下げ幅となりました。5日発表の11月のISM非製造業指数は低下を見込んでいた市場予想(53.3)に対して56.3と前月(54.4)より上振れたことや、9日発表の11月の米卸売物価指数が前月比+0.3%と市場予想(+0.2%)を上回ったことなどから、FRBの引き締め姿勢が続くとの見方が強まったことが影響したと考えられます。また、7日にロシアのプーチン大統領が「世界で核戦争の脅威が高まっている」と発言したことも地政学リスクを惹起させたようです。
今週は13日発表の11月の米消費者物価指数ならびに13-14日のFOMCが焦点となります。今回のFOMCでは利上げ幅だけでなく、政策金利見通しの発表が予定されておりますが、既に市場では0.75%→0.5%と利上げ幅が縮小することが織り込まれており、一番の関心事は政策金利見通しになると考えられます。政策金利のターミナルレート(最終金利)は5.00-5.25%程度が市場に織り込まれていると推察されますが、これを超える見通しが示されない限りは、一旦悪抜けから株式市場は反発する展開を予想いたします。
8日にカナダ銀行(中央銀行)が0.5%の利上げを行った後に、利上げサイクルを一旦停止する可能性を示唆しました。また、15日予定のECB理事会ではやはり利上げ幅の縮小(0.75%→0.5%)を市場は見込んでおり、世界的にも利上げスピードの減速が生じていることが伺えます。ただし、インフレ率の高止まりと経済減速(あるいはリセッション)から株式市場の本格反騰にはまだある程度の時間を要するものと考えます。
ウクライナ/ロシアの戦闘は出口のまだ見えない状況が続いているものの、中国経済については7日にコロナ対策の緩和策が打ち出されており、懸念がやや薄らいでいます。原油価格もロシアのウクライナ侵攻前の水準にまで低下しており、資源高によるインフレ懸念も終息しつつあります。
12日のNY市場においては、こうした動きを先取りするかのように株価は大幅高となりました。日本株は来年度の業績停滞をまだ織り込む段階にあるものの、目先的には楽観論が広がる可能性が高そうです。
この記事を書いている人
藤根 靖昊(ふじね やすあき)
- 東京理科大学 大学院総合科学 技術経営研究科修了。
- 国内証券(調査部)、米国企業調査会社Dan&Bradstreet(Japan)を経て、スミスバーニー証券入社。化学業界を皮切りに総合商社、情報サービス、アパレル、小売など幅広いセクターを経験。スミスバーニー証券入社後は、コンピュータ・ソフトウエアのアナリストとして機関投資家から高い評価を得る(米Institutional Investorsランキングにおいて2000年に第1位)。
- 2000年3月独立系証券リサーチ会社TIWを起業。代表を務める傍ら、レポート監修、バリュエーション手法の開発、ストラテジストとして日本株市場のレポートを執筆。