場所ではなく、ヒトに届けるクロネコのアジア戦略

2012/07/09

ヤマトホールディングス(コード9064)の木川社長の話を聴いた。ヤマトHDは海外ではあまり知られていない。1919年創業の運輸会社、パーセル・デリバリー・サービスをスタートして、30年がたつ。7年後に創業100周年を迎えるが、現在、7ヵ年の中長期計画を立てて、それを推進している。

目標は、アジアでNo.1の流通ソリューションプロバイダーになろう、というものである。海外フォワーダー(海外貨物運送業)や国際引越しは20カ国で展開しているが、宅急便は2000年に台湾に進出したのが初めてで、2年前に上海、シンガポールへ、昨年香港、マレーシアに進出した。

クロネコヤマトの宅急便をアジアで本格的に展開しようとしている。しかも、サービスは国内と同じもので、日本国内と同じレベルの内容で提供しようとしている。日本のサービスは過剰ではないか、というアンケートも出ているが、サービスのレベルは落とさない方針である。

その場合、海外でモノを運ぶという役務(サービス)を日本人でやることはできない。現地の人に同じレベルでやってもらうことになる。日本と同じようなセールスダライバーになってもらう。営業マンがドライバーをやって届ける。一定の時間帯に届ける。不在なら何度でも訪問するという日本のやり方は崩さない。

代金回収のコレクト、世界で真似のできないクール宅急便、コンビニへの受渡窓口の設置など、すでに現地でスタートさせている。香港ではサークルK、白洋舎もデリバリーの拠点になっている。新鮮な生ガキもクール宅急便で届けられる。香港をアジアのハブにして、華南(深圳、広州)、華東(上海)、華北(北京)を結んでいく。広域の中で、日本と同じような仕組みを実現して行こうとしている。

日本では宅急便によって、生活スタイルや生活文化が変わった。この変革をアジアで起こしていきたい、と木川社長はいう。宅配は、場所に届けるのではなく、ヒトに届けることをミッションとしている。中国では、Eコマースの配送がネックとなっている。ここにニーズがある。

一方、アジアでは、何でもすぐに真似されてしまう。すでに似たような業者も出ている。しかし、日本で作り上げた仕組みをアジアの広域で展開するならば、その優位性が生きるはずである。まさにジャパンテイストの実践である。現在数%の海外売上比率を7年後には20%以上に持っていくことを目標に掲げている。ROEでも11%以上を目指している。大いなる挑戦である。日本での強みをアジアでも発揮できるか、アジア版クロネコヤマトのビジネスモデルの確立に期待したい。

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