グローバル・マイクロ・カテゴリー戦略に勝機あり

2012/06/26

日本企業は、はさみ打ちに合っている。途上国と先進国の両方から攻められて、逃げ場を失っているようにも見える。しかし、産業によって、企業によって大きな差があり、強さ・弱さを一方的に見るだけでは偏りが生じる。

製造業はもちろん、サービス業でも多くの企業がアジアに進出していく。アジアに出て行って成功している流通業の代表は、コンビニ(コンビニエンス・ストア)であろう。日本で培ったビジネスモデルが見事に通用している。

かつて、こんな話を聞いたことがある。ある大手の流通業のトップがGMS(大型スーパー)の効率化を進めた。この仕組み革新を自動車会社の合理化の達人にみてもらったところ、全く不十分であるとの診断が下ってしまった。ところが。同じグループのコンビニを見たら、これは十分合格であるということであった。製造業の視点で見ても、コンビニのビジネスモデルはしっかりと出来上がっていたのである。

自らの強みを突き詰めていき、そして、それがアジアでも通用するのであれば、現地進出は上手くいこう。ここが問われている。一方で、製造業にありながら、海外現地生産にでていかない会社もある。海外での販売は大いにしているが、現地生産はせずに競争力を確保する作戦である。

日進工具(コード6157)は、金型を加工する工具の中で、刃先径6㎜以下の超硬小径エンドミルメーカーとして、業界トップである。この会社は海外に工場を作らない。メイド・イン・ジャパンで世界を目指す。

日本の電子部品は世界トップクラスである。海外に出ていくにしても、コアは日本に残す。その日本市場において、小径エンドミルでトップになれば、世界でもトップになることができるという考えである。

当社は、輸出中心で、海外生産は考えていない。メイド・イン・ジャパンでいいものを作り、国内を固めれば、小さい商品なので世界に輸出するにも物流コストは高くない。コストダウンも進めるので、輸出で十分戦える。輸出の仕向地をみると、欧州の輸出先は、独、仏、伊、スイスで、自動車、航空機、医療機器の部材加工分野に強い。これに関連した機器メーカーにエンドミルを納入している。アセアンでは自動車、家電向けが多い。

輸出では刃先径12㎜などの市場はかなりある。生産すれば売れることは分かっているが、当社では積極的にはやらない。あくまで小径で差別化していく方針である。欧州とアジアは攻めているが、米国には積極的には参入していない。欧亜は日本と同じ㎝、㎜でいけるが、米国はインチである。メートル法でない国の商品は別に作る必要があり、それは効率的でない。

途上国の追い上げへ対抗する戦略、つまり韓国、台湾、中国の企業との競争についてはどのように考えるか。アジア市場もニッチ戦略でいく。市場が伸びているので参入しやすいが量を追いかけるといずれ価格競争になる。これを避けるには当初から差別化していくことを考える。

今のところ。超硬小径エンドミルについて、アジアの企業は競争相手になるほどではない。性能、品質面でのバラつきから見て、その差は大きい。価格は日本の2分の1、3分の1ながら、肝心の性能が出ない。しかし、レベルは上がってきているので、次の手を打っていく必要がある。当社はメイド・イン・ジャパンを基本としつつ、2つの戦略を実行している。1つは、新製品の開発であり、もう1つは生産性の向上である。

生産性の向上では、生産効率のアップに向けて、自社開発機械による無人化を図っている。これによって20~30%の生産性アップは十分できる。新製品の開発と相まって、現地ローカル企業にネットワークを広げ、販路を確保しておくことが重要である。販路がしっかりできていれば、いざとなって無人化機械で現地生産に入ることは十分可能である。今のところその計画はないが、十分な競争力を確保するために手を打っている。

中期的には、超硬小径エンドミルのシェアを40%に高めることは可能であろう。また、海外売上げが現在20%であるが、これを30%に上げていけば、その分成長余地は高まる。海外の採算は今のところ国内よりやや低いが儲かっている。海外も国内と同じように小径で攻めていく、このニッチ戦略は十分通用する。グローバル・マイクロ・カテゴリー戦略に勝機あり、といえよう。

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