ワンプライスショップのアジア戦略

2012/05/28

ワンプライスショップという業態は、国内においても海外においてもかなり頑健であり、今後とも通用しそうである。

大手の動きをみるとダイソーは、中国への進出拡大を狙っている。まだ、日本の100円ショップが中国で成功しているという例はない。ダイソーは、台湾の百貨店の中で展開しているフォーマット(DAISO JAPAN)の日本での展開を始めた。きれいな店で陳列もおしゃれである。ダイソーはセリアよりもおしゃれを狙っている。

一方で、徹底したローコストオペレーションのワッツにも対抗しようとして、増量したお買い得商品の導入もしている。ワッツは、小回りのきいた商品作り、店づくりで、ローコストを追求し差別化を図っている。

セリアはファッション性で伸ばしており、この戦略は当っている。ショッピングモールでの大きな店、きれいな店という感じである。一方、ワッツはスーパーの中の小さな売場というイメージで、小回りのきくローコスト経営を実践しているという点で、直接ぶつかっているわけではない。

ワッツは、居抜き出店の上、店の内装、外装は施さない。セリアはカラーザディズというブランドの店を出店する。ワッツは食品スーパーの雑貨コーナーに出店する。セリアはカラーザディズをこうした店舗ではやらない。出ていいく場所が違うのである。雑貨は在庫が多く、回転が悪いので、仕組みにお金をかけると利益は出なくなる。ワッツは効率とコストをよくよく考えて、常識にとらわれない。

キャンドウは、大都市で大型店を出している。大型店の出店余地はさほど多くないので、急拡大は難しい。200円商品を100円ショップの中で販売しているが、顧客のお得感という点ではワッツと方針が異なっている。

そのワッツが、タイで「こものや」というジャパンテイストを活かしたファッショナブルな店を本格展開している。テーマは、海外店舗運営のフォーマット確立である。3年前にタイのバンコクで100円ショップと同様の均一ショップ「こものや」を始めた。タイの均一ショップは日本と同じではなく、タイの消費者にとって安いわけではない。むしろ高い。中国製では価値がなく、メイドインジャパンが大事である。日本の製品だからこそ、その雑貨が少し割高でも新鮮で面白いと受け入れられる。ジャパンテイストが受け入れられているのである。

タイの「こものや」はデパートモールに出店している。かなりレベルの高いショッピングセンターであり、「こものや」もおしゃれな店として位置付けられる。60バーツ(150円)均一という現地ではかなり高い。ここでの展開は安さの追求ではない。ジャパンテイストを活かして、この商品がこの値段ならちょっといい、という感覚である。

タイでの出店はすでに7店に及んでいる。2010年末に2店、昨年12月に1店出店した。既存店は+10~20%で伸びている。月次で黒字を実現すべく力を入れている。今のところいい方向にある。この出店で、アジア展開の基礎が出来たといえる。黒字化の目途も立っているので、次の国への展開を目指している。民度が高くてジャパンテイストが受け入れられるという点では、マレーシアやインドネシアがターゲットになろう。

ここで、フォーマットとブランドを確立し、収益化の目途も立ち、立ったところでタイの他の地域にも幅広く展開していく。タイについては、今期10店まで増やすが8~9店目で黒字化を見込む。その後3年で40店まで増やす方向である。そうすると年商が10億円を超えてくる。

当社は100円ショップで業界4位であるが、徹底した低コスト出退店と店舗オペレーションで効率を上げている。ワッツセレクトと銘打ったお買い得品を用意するなど、消費者への訴求が店舗ロイヤルティを高め、既存店がプラスとなっている。2011年8月期にはROEが23.4%と高い水準に達し、収益力は確実に向上している。

2014年8月期までの3ヵ年計画では、直営店を中心に年間50店のペースで店舗増を図る計画である。2014年8月期で、売上高453億円、営業利益25億円、売上高営業利益率5.5%を目標にしている。その達成は十分見込める方向で進んでいる。

ROEは20%台と、業界トップクラスである。低コストオペレーションが活きる余地はまだまだ大きい。海外市場への布石に収益的な目途が立ってくれば、株価水準は一段と見直されてこよう。

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