医薬品開発のアウトソーシング

2012/05/15

医薬品業界において、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)が進んでいる。BPOとは、自社の業務プロセスを外部企業に委託することである。業務を社内で行ったほうが効率的である場合と、自社で対応するよりも、外部の専門業者に任せた方が効率的である場合もある。IT業界、エレクトロニクス業界など、さまざまな分野でBPOが進んでいる。しかも、国内だけでなく、グローバルに展開されつつある。

医薬品業界のバリューチェーン(価値を生み出す業務の流れ)は、新薬の開発、生産、販売において多くのプロセスがあり、その中でBPOが進んできた。CRO(開発業務受託機関)は、新薬開発における臨床試験(治験)を専門的に担当する。新しい薬になりそうなものが、本当に効くか、副作用はないかなどについて、データを収集し、解析を行う。このCRO業界はここ10年で大きく成長した。現在、業界のトップグループは、1位シミックホールディングス(コード2309)、2位イーピーエス(コード4282)、3位は外資系で、4位以下が2番手グループに位置する。

1位と2位は接近しており、近々逆転する可能性がある。一方、2番手のグループのトップに位置するメディサイエンスプラニング(コード2182)は、上位グループとは違った作戦に力を入れている。シミックは、社長が医薬品メーカー出身ということもあり、医薬品の治験だけでなく、医薬品の製造にも事業を広げている。イーピーエスは、社長が中国出身であることを活かし、中国事業を拡大しようとしている。これに対して、メディサイエンスプラニングは社長が医者であり、九州トップクラスの医療法人を育てた実績を活かして、医療法人とのつながりを強めようとしている。

メディサイエンスプラニングは、製薬会社等に対し医薬品開発に関わるさまざまなサービスを提供するCRO(開発業務受託機関)の大手である。業界4位であるが、上位3社とは距離があり、2番手グループのトップにつけている。年商100億円規模が対抗上のターゲットである。09年までの5年間は順調に伸びてきたが、2010年8月期は大幅減益となった。新薬治験に関わる複数の大型プロジェクトの中止が業績に響いた。2011年8月期は、これをどう埋めていくかが課題であったが、十分な手を打ち乗り越えた。売上高営業利益率でも過去最高の9.2%を上げた。この間、CROの事業譲渡を受け、本業を強化している。また、医薬品開発関連の出版社に出資し、同社及びその子会社のSMO(治験施設支援機関)を通じた、病院など医療機関へのサービス展開にも布石をした。

今2012年8月期は、前年度に引き続きピーク利益を更新しよう。2Q累計(上半期)は売上高4058百万円(前年同期比+26.1%)、経常利益607百万円(同+236.1%)と極めて好調であった。主力のモニタリングで稼働率が上がり活況なことと、周辺業務の採算も向上したことによる。通期の経常利益の伸び率も同+32.5%と大幅なものになろう。中期計画の達成に向けて人材の強化が必須なので、先行的な人員の増加を見込んでいるため、下期の業績の見方は慎重であるが、会社計画を上回る公算は大きい。

2010年8月期を初年度とする中期3カ年計画の「アクションプラン30」では、2012年8月期に売上高90~110億円前後、売上高営業利益率12~15%を目指していたが、1年目の業績が大きくダウンしたので、達成のハードルは高くなった。そこで、目標の達成時期を1年延長し、「アクションプラン30 plus one」として、来2013年8月期の達成を掲げている。この達成については、ほぼ射程内に入ってきた。来期は売上高で93億円、営業利益で12億円、売上高営業利益率12.9%が見込めよう。

中期計画で目指している人材の質の向上、医療機関との結びつきの強化という方針に変わりはない。次なる飛躍に向けて着実に手を打っている。1つはグローバルCROとの連携、もう1つはITを活用した医療機関との連携強化である。世界第2位のCROである米国PPD社との連携プレーが始まった。ROEが20%台にあり、業績も好調なので、マーケットにおける企業価値の見直しは一段と進展しよう。

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