経営者のマネジメントスタイル~ROVC経営のすすめ

2016/08/23 <>

・経営者のマネジメントに対する基本的な考え方を知るには、決算説明会や中期経営計画発表会でない方がよい。決算説明会はその期の決算の中身や翌期の計画が中心であり、社長の思いや考え方はあまり出てこない。中期計画の説明会では、計画の中身を一生懸命説明するので、社長が何を本音で考えているかは今ひとつわからないことも多い。

・では、どういう場面で、それが最もよく出てくるか。会社のユーザー向け展示会での講演、外部の経営者フォーラムでの講演、個人投資家向け会社説明会、海外投資家向けIRセミナーなどで社長の話を聴くと、社長の個性がいろいろ伝わってくる。経営に対する自らの考えが必ず入ってくるからである。

・「わが社の企業価値経営」というテーマで、トップに好きなように語ってもらったら、どの会社の社長もそれぞれ面白いと思う。ただし、心配な面もある。1)経営環境の変化に上手く対応できず、成り行きまかせになっていないか。2)顧客や取引先の言いなりになって、ふりまわされていないか。

・3)何か自信が持てずに、ひ弱になっていないか。4)今のやり方に、あぐらをかいていないか。5)将来の方向について、勝手に思い込んでいないか。6)こだわりにとらわれて、頑固になっていないか、などさまざまな見方が出てくるかもしれない。

・経営はバランスが大切であるといっても、どこかに重点をおき、軸足を定めているものである。それを、①クライアントフォーカス、②マーケットフォーカス、③ビジネスフォーカス、という3つの視点で捉えることもできる。

・クライアントフォーカスは、プロダクトやサービス、そして今どきであれば、ソリューションにフォーカスする、商品やサービスをベースに、顧客の課題を解決するという姿勢である。ここでしっかり付加価値を生み出せばよいが、うっかりすると「いいなり経営」や「ひ弱な経営」に陥りかねない。

・マーケットフォーカスは、顧客マーケット、資本市場マーケット、地域社会など、ステークホルダーが形成する市場動向に敏感に反応する。例えばキャピタルマーケットフォーカスでは、ROEが重要であると喧伝されているので、ROEの向上にフォーカスする。それに合わせればよい、あるいは、すでにクリアしているから問題ない、という対応になりかねない。こうした「成り行き経営」や「あぐら経営」に甘んじては困る。

・ビジネスフォーカスは、大事なことはビジネスの仕組みなので、ここを強くするようにひたすら力を入れる。ビジネスモデルの頑健性(ロバストネス)は重要であるが、次のビジネスモデルへフレキシブルに進化していく仕組みを組み込んでいく必要がある。「思い込み経営」や「頑固経営」ではいずれ行き詰まってしまう。

・経営者は、必死に現状の課題に手を打ち、次の将来を創り出すことに腐心している。一般的に、投資家よりははるかにものごとをつき詰めて考えている。それでも、経営の執行に甘さが見えてしまうのはなぜだろうか。

・1)やるべきことはわかっているのに、それをきちんとやらずに、結果として手抜きとなっていることがある。2)先が読めないので、打つ手を決めかねている場合もある。3)将来の方向性はある程度見えていても、それに対応する経営資源(人材、資金、知財など)が不足しているか、うまく活用できていないこともある。

・いずれにしても、準備をして実行に移す必要がある。時間との戦いである。軸がブレないようにするには。やはり「わが社の企業価値創造」をしっかり固めることである。自社の新しい価値の源泉を定義し、それを作り出すビジネスモデルを再構築して、そのリターンを追求する。

・このバリューフォーカスの軸を、第4の軸として加えたい。そして、バリューフォーカスを主軸にして、クライアントフォーカス、マーケットフォーカス、ビジネスフォーカスを統合していく。

・バリューフォーカスに主軸に置くROVC経営(Return On Value Creation)を徹底してほしい。経営におけるバランスの本質は、価値創造を追求する中で、そのプロセスのバランスをとることにある。さまざまなステークホルダーに順番を付けたり、偏りがないようにすることではない。

・投資家は、‘会社がどのようにROVC経営を実践するのか’について、対話を通して深く知り、いい意味でのサポートをしたいと考えている。

株式会社日本ベル投資研究所
日本ベル投資研究所は「リスクマネジメントのできる投資家と企業家の創発」を目指して活動しています。足で稼いだ情報を一工夫して、皆様にお届けします。
本情報は投資家の参考情報の提供を目的として、株式会社日本ベル投資研究所が独自の視点から書いており、投資の推奨、勧誘、助言を与えるものではありません。また、情報の正確性を保証するものでもありません。株式会社日本ベル投資研究所は、利用者が本情報を用いて行う投資判断の一切について責任を負うものではありません。