社長の時間をどこに使うか
サイバーエージェント(コード4751)の藤田晋社長の話を個人投資家向け説明会で聴いた。藤田社長は、今まで力を入れていたIRへの登場を控え、社内の人材採用面接への参加も控え、会食、海外出張も減らして、社長の仕事のバランスを意図的に崩し、一点に集中しているという。
では、何に時間を使っているのか。それは、“スマホのサービス開発”で、今ここで頑張らないと後悔するからであると強調していた。今年春から夏にかけて、スマホ(スマートフォン)向けにいろいろなサービスを出して勝負する意気込みである。
1998年に会社を設立し、この時26歳、丸2年で上場した。当時はネットバブルの時代であったが、ここで225億円のファイナンスができたことが発展の基となった。PCのインターネット広告で基盤を作り、アメーバ(Ameba)のメディア事業を2004年からスタートさせた。
アメーバは5年間赤字を続け、累計60億円の損失を出した。それが2010年から黒字化し、10年~11年の2年間で64億円の営業利益を出して、過去の損失を帳消しにした。2012年9月期については、売上高1300億円、営業利益170億円を計画しているが、このうちアメーバの利益が100億円を占める予定である。
インターネット広告も、FXも一つの繋ぎであって、ようやく、元々やりたいと思っていたメディア事業が本格的に立ち上がってきた。収穫逓増のビジネスモデル(コストが増えずに、売上の増えた分がそのまま利益に積み上がっていく仕組み)で、現在の売上高営業利益率13%を、1~2年で30%に近づけていくことができると藤田社長はみている。
その事業転換に向け、スマホ関連のネットビジネスで100の事業を立ち上げると宣言する。昨年12月までに30ほど作ったが、このために全ての時間を使い、人材の投入を図っている。全ての事業が成功するわけではないが、1つの事業が上手くいかなくてもリスクは小さいので心配はない。
かつて、PCからケータイにシフトする中で、サイバーエージェントはやや出遅れた。それを教訓にスマホ対応では、すべてを一気にやり直している。人材については、これまで新卒採用100人中20人が技術系であったが、今年は200人中100人がエンジニアである。その先は60~70%をエンジニアとする方針である。
中途採用にも力を入れているが、自社の社内文化を大事にしているので、内部成長を重視して、大型のM&Aはしない方針である。事業も人材も自社で育てるというサイバーエージェントのスマホシフトに注目したい。